Nicotto Town


小説日記。


夢操作実験//Database▷case1-1




fileα
■被験者▷凪良 槐//female//age15
■記憶媒体/インポート/保健室ベッド/擬似生成/精神転送
■dive//ゲラゲラ医者
■実験予定時間90分
■開始予定時間AM10:00
■終了予定時間AM11:30


******


 頭がクラクラした。
 授業が終わって、校庭に、出た。
 グラウンドに足をついた瞬間、ぐるぐる、目が回った。
 上も下も分からなくなるほど、足元が、頭がぐるぐる回って、そこに倒れ込んだ。
 目がチカチカした。
 赤と黒。
 死ぬんじゃないか。そう思うほど気分が悪くなり、胸が押しつぶされそうにになるほどの吐き気を振り払おうと、ごろごろとグラウンドで悶えた。
 そのまま、視界が赤黒く変色していく。
 そして、一瞬。
 瞬きした。気絶した。
 ほんの一瞬。そうしたら、急に気持ちが悪いのが嘘みたいに収まって、立ち上がった。
 急に、怖くなって、すぐに戻った。
 廊下。教室。
 誰も居ない。
 空が、真っ青だった。
 今まで見たこともないほど、真っ青だった。
 それを見たあと、教室を出た。人が居た。
 見たことのない、生徒だった。
 同じクラス、学年じゃないんだから、当たり前かと思った。その時は。
 そうして、イチゴミルクを買いに行こうと思って、外に出た。いつもの味、あれを飲めば、ちょっとは落ち着くんじゃないかと思った。
 外に出たら、やっぱり、やたらと空が青かった。青い絵の具で、直接天井を塗ったみたいだと思った。
 けど、すごくすごく青くて、異様に、空が高かった。
 そして、空気に臭いがした。
 嫌な臭いじゃなかった。でも、今まで一度も嗅いだことのない臭い。
 そのまま、外の渡り廊下を使って、自動販売機を探す。その途中に、生徒用の掲示板があった。
 無造作にそこに目をやって、驚いた。

 ア活めるゆフィ柿のさと

 読めない。日本語が、ぐちゃぐちゃに羅列されてるだけの文章。
 脈絡がない、違和感の塊。
 ほかの掲示物もそうだった。
 生徒総会の立候補者の写真に、へつ下のイ目はタイ燻ら當兎
 可笑しいなとは思った。
 でも、そんなに気に留めなかった。
 渡り廊下の突き当たりの体育館前に自動販売機がある。
 でも、そこに向かう途中のコンビニには、イイ目だ
 とか書いてある。
 すれ違う生徒や教師は普通に居た。でも、とりわけ可笑しいところもなくて、全然普通だった。
 自動販売機の前に着くと、喋りだした。小さな電光掲示板に、アタリとかハズレとか、出るやつ。
 でもその自動販売機は、アヨダナマーリッサー 
 的なことを言った。
 よく見ると、飲み物の外装こそ変わらないものの、そこに書いてある文字も可笑しかった。
 だんだん、怖くなってくる。それでも習慣で、硬貨を入れると、イチゴミルクの白とピンクのパッケージのボタンを押した。
 一口飲む。
 少し、胸がスッとした。
 携帯電話を取り出す。圏外。
 やっぱり、と思った。
 メールの文章はいつも通り。普通の日本語。
 なのに周りにある文章は、可笑しな言葉の羅列。
 背筋がゾッとした。
 怖くなってその場を離れる。急いで自室に戻った。
 おかしい。可笑しい。
 テレビを付けた。けど、やっぱり理解できなかった。
 見たこともない番組。知らないタレント。
 イチゴミルクをもう一口飲む。少し安心する。
 安心したところで冷静になり、倒れた時に頭でも打ったかと思って、保健室に行った。とにかく、知っている人に逢いたい。話したい。
 それなのに、道中に見る文字列は、やっぱり可笑しい。
 保健室の先生は、知らない男の人だった。
 保健室のソファを指差し、俺を身振り手振りで誘導した。 
 白衣の男の人と一緒に座った。 
 白衣の人はいろいろ話しかけてきてくれる。でも、意味がわからず、学生証を見せたりした。 
 しばらくすると、教授らしき人が三人きた。 
 教授らしき人と白衣の人は、チラチラとこちらを見ながら話をしている。教授が近づいてきた。 
 ぺこり。頭を下げる。
 そして手を取って、軽く引っ張ってきた。 
 何がなんだがわからない。でも、この教授の人たちが何とかしてくれると思って、そのまま引っ張られていった。
 エレベーターに乗り込むと、また知らない教授の人が増える。声をかけてくれるけど、やっぱり分からない。
 急に涙が出た。急に寒くなって、身体が震える。
 その間、ずっと背中を撫でて慰めてくれた。おかげで逃げ出さずに済んだ。
 エレベーターが止まると、教授たちの応接室のような場所に通された。広いソファにテーブル。
 緑色のお茶みたいなもの、お菓子みたいなものが置いてあった。
 なぜか、無性にがっつきたくなった。
 ジェスチャーで食べていい、というような素振りがあったので、手を合わせてからお菓子に手を伸ばした。
 飲み物は、もう持っていたから。
 お菓子は煎餅みたいなものと、小さな饅頭みたいなもの。 
 煎餅と饅頭は、とくに変な味はしなかった。 でも、自分の知っている味とは違った。
 教授たちはずっと応接室にいて、ずっと観察していた。
 お菓子を食べる手は止まらなかった。ずっと食べていた。
 すると、スーツの人が二人、入ってきた。 
 スーツの人は両手を出すと、手の平を向けてきた。 
 両手の裏表、ひっくり返す。今度は鞄から、ペンライトを出した。 
 スーツの片方が横に座って、両手を優しく押さえてきた。 
 別の片方がペンライトを指差すと、光を目の方へ当ててきた。 
 眼鏡のレンズを通して眩い光が、目の中に入ってくる。
 そのまま光を見ていた。ペンライトのスーツにまぶたを広げられて、また観察された。 
 結局、両目やったあと、今度は口内、鼻、耳にも光をあてられた。
 診察が終わると、隣のスーツが手を離してくれた。
 今度は話しかけられた。 
 スーツの人が何か言うと、間が空く。明らかに質問をしていた。 
 でも、言葉がわからないから黙っていた。質問毎に紙にチェックをしてた。 
 どうしていいかわからず、首を傾げていた。ふと、文字なら伝わるかも、と思って携帯電話を出した。 
 携帯電話で新規メールを作製する。言葉がわかりません」と打って向かいに座っているスーツの人に見せた。
スーツの人は、物凄く驚いていた。 
 でも、相変わらずわけのわからない言葉を教授たちと話して、取り上げた携帯電話の画面を見せ合っていた。
 けれどその後、紙に「言葉がわかりません」とスーツの人が書いた。ペンで、その文字を指す。 
 言葉が通じたのかと思って、「うんうん」と大きく頷いた。でも、沈黙が降りただけだった。
 間。
 スーツの人が、「言葉がわかりません」の文字の上を指でなぞりながら、「ウヨメ、が、わかりません」と言った。 
 ゆっくり、言い聞かせるように。
 期待と不安を綯交ぜにしながら、「ことば、が、わかりません 」と返した。
 けれど、返事は無かった。
 視線が集中する。
 背筋にまた寒気が降りた。
 立ち上がる。無意識だった。
 そして、逃げ出した。



*****


次回⇒http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=385716&aid=61579961

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