「戀せよ花魁、貉となりて。」

あんたを待ちんしょ
常永久の時を
あんたが帰って来る時迄

満月の夜
すすき茂る原
蜻蛉があんたの頭に止まる

あちきを抱き寄せ
時間よ暫く
止まれや止まれ
止まってくだしゃんせ

あんたの闇みたいな黒い眼に
嗚呼、吸い込まれそうでありんすえ

そんなあんたは何処に行...

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「御悩戀歌」

傾國なり　我が姫君

蒼白の指　組んで
願うは安らげる死
薄藤の唇　歌うのは
想い人への夢

生きるのが何よりも
許されぬものならば
どうか
この何より愚かな女を殺して

現実はいつも純白で
意味を知る度
姿を変え、往く

己で袖を濡らしても
愛しく思うのは　何故
息が止まると知りつ...

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「盲目戀歌」

君の腑（ﾊﾗﾜﾀ）抉り出し　黄泉（ﾖﾓﾂ）の愛を注ぎたい
焔の寿を此岸の君に
悠久の命を此岸の君に
地獄からは這い上がれない
愛しい君は手に入らない
嗚呼　須世理姫

塋から手を出し　君ノ白首
紅ヒ手痕ヲ
花さえ嘔吐す　証　馨し
愛慕と嫉妬の梦裏腹に

最期の宴を　醜さ礼讃
何時か君...

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「死嬪戀君物語」

怪シヤ　物之怪ノ夜

霊（ﾀﾏ）の声　響き渡る　
聖なる満月の夜に
傾国嬪君の様　肌蹴タ衣落チテ

月陽（ﾂｷﾋ）浴び白く透けた
褥に仰向けの君
腿を這う紅い蜈蚣

月影の天狗
屋根で哭く鵺よ
　あはれ
絃を繰る女蜘蛛
　いとあはれなり

月照らす嬪　淫らに蒼く
動かぬ白指　開い...

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「まなざし」

黄金の森に君は沈みゆく
蒼灰の目と動かぬ唇

虚ろな君のまなざしの奥は
涙の海と悠久の星空

眠ってる君の薄紅の頬に
震える小鳥の温もりはあるの？
この指が君の頬を撫でるなど出来はしない
汚れたこの指など

美しい君の
まなざしは何を映すのだろうか

はらり

はらり

金の木葉

...

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