Nicotto Town



アスパシオンの弟子34 緑のトンネル(後編)

――「ふうん、あんたたち、ずいぶん北から来たんだねえ」  しゅかしゅか噴き出す蒸気。回転する巨大な車輪。流れていく緑の視界。  きんきんと金属音を立てながら「運搬車」が緑のトンネルを走っていきます。  先頭の操縦席で胡坐を崩して振り返ってくるのは、円い鉄兜を被った少女――。  「まあ、あんた...

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アスパシオンの弟子34 緑のトンネル(前編)

 そよ、と吹き抜ける風。  頬に当たるほのかな熱。  日が当たっているのだと思ってうっすら眼を開ければ…… 「うわ? これ、木?」  ここは――どこ? あたり一面、緑。緑。緑……!    僕は驚いて跳ね起き、天を仰ぎました。オリハルコ...

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アスパシオンの弟子33 昼下がりの庭園(後編)

「……それで我が娘ローズマリイ・マーガレット・サクラコよ。三人とも倒したわけだな」  あたくしはおずおずと指を二本立てて、駆けつけてきたお父様にお答えしました。「二人、ですわ」  あたくしたちの足元には、気絶した侵入者が二人。それから、今にも死にそうな針金のように細...

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アスパシオンの弟子33  昼下がりの庭園(前)

今回は幕間、王妃様視点のお話です。

 気だるい午後ですこと。  目の前の池から爽やかな風が吹いてきてますけれど、焼け石に水ですわね。  池の岸辺に置いた寝椅子(びいちちぇあ)は絶妙な角度。可憐な桃色(しょっきんぐぴんく)の薔薇柄の薄絹しいするうをまとって、しどけなく針金のような白い素足をさら...

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アスパシオンの弟子32 映し見の鏡(後編)

「要するに、弟子じゃなくなればいいんだ」  我が師は自信満々で変身術の韻律を唱えました。  その呪文の言葉はまさしく、ウサギに変じさせるもの。  なるほど、「今の僕」でなくなれば、メニスの支配の力は及ばな―― 「あれっ?」 「あ、だめみたいですね」 「うそおおおっ」  長い耳も白い毛...

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