アスパシオンの弟子34 緑のトンネル(後編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/02/27 13:31:33
――「ふうん、あんたたち、ずいぶん北から来たんだねえ」 しゅかしゅか噴き出す蒸気。回転する巨大な車輪。流れていく緑の視界。 きんきんと金属音を立てながら「運搬車」が緑のトンネルを走っていきます。 先頭の操縦席で胡坐を崩して振り返ってくるのは、円い鉄兜を被った少女――。 「まあ、あんた...
――「ふうん、あんたたち、ずいぶん北から来たんだねえ」 しゅかしゅか噴き出す蒸気。回転する巨大な車輪。流れていく緑の視界。 きんきんと金属音を立てながら「運搬車」が緑のトンネルを走っていきます。 先頭の操縦席で胡坐を崩して振り返ってくるのは、円い鉄兜を被った少女――。 「まあ、あんた...
そよ、と吹き抜ける風。 頬に当たるほのかな熱。 日が当たっているのだと思ってうっすら眼を開ければ…… 「うわ? これ、木?」 ここは――どこ? あたり一面、緑。緑。緑……! 僕は驚いて跳ね起き、天を仰ぎました。オリハルコ...
「……それで我が娘ローズマリイ・マーガレット・サクラコよ。三人とも倒したわけだな」 あたくしはおずおずと指を二本立てて、駆けつけてきたお父様にお答えしました。「二人、ですわ」 あたくしたちの足元には、気絶した侵入者が二人。それから、今にも死にそうな針金のように細...
今回は幕間、王妃様視点のお話です。
気だるい午後ですこと。 目の前の池から爽やかな風が吹いてきてますけれど、焼け石に水ですわね。 池の岸辺に置いた寝椅子(びいちちぇあ)は絶妙な角度。可憐な桃色(しょっきんぐぴんく)の薔薇柄の薄絹しいするうをまとって、しどけなく針金のような白い素足をさら...
「要するに、弟子じゃなくなればいいんだ」 我が師は自信満々で変身術の韻律を唱えました。 その呪文の言葉はまさしく、ウサギに変じさせるもの。 なるほど、「今の僕」でなくなれば、メニスの支配の力は及ばな―― 「あれっ?」 「あ、だめみたいですね」 「うそおおおっ」 長い耳も白い毛...