アスパシオンの弟子40 桃色の邂逅(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/04/11 10:30:36
「お師匠さま、交代です」――「んがっ」 メニスの繭の見張りを始めて三日目。 僕は妃殿下の温室で、いびきをかいて長椅子にでんと寝ている我が師を揺り起こしました。 この温室の中は外に比べて大変涼しいです。ギヤマン張りの壁は特殊な膜が貼られていて、南国の強烈な日光を遮るようになっているからです。 ...
「お師匠さま、交代です」――「んがっ」 メニスの繭の見張りを始めて三日目。 僕は妃殿下の温室で、いびきをかいて長椅子にでんと寝ている我が師を揺り起こしました。 この温室の中は外に比べて大変涼しいです。ギヤマン張りの壁は特殊な膜が貼られていて、南国の強烈な日光を遮るようになっているからです。 ...
僕の全身が、ざわっと震えました。 「やっぱり、そうなんだ? フィリアは僕に、また甘露をくれたんだ? メニスの血を……」 「うん。自分が治してやるんだって、手首切って、瀕死のウサギに血をぶっかけてたわ」 後ろからついてきた兄弟子様が、ぼふっと僕の頭に手を載せました...
まっ暗闇の中に落ちた僕は……誰かの呼び声で目覚めました。 『ぺぺ! ぺぺ!』 黒髪の男の子がびいびい泣いています。 ウサギの僕をぎゅうっと抱っこして、すりつぶしたニンジンをむりやり食べさせようとしています。 『ぺぺ。しっかりしろ! ぺぺ! これを食べろ! ...