アスパシオンの弟子46 望郷(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/05/23 13:16:19
思いがけない宝物を得た僕らは一路、トルナート陛下がおわす王宮を目指しました。 とはいえ、緑虹のガルジューナは永い間鉱山で眠っていたので、新しい王宮の場所を知りませんでした。 勢いよく飛び出し地の大動脈に出たものの、突然ひたと止まり、 『どこの番地だ?』 と聞いてきたので、僕らは一所懸命今の...
思いがけない宝物を得た僕らは一路、トルナート陛下がおわす王宮を目指しました。 とはいえ、緑虹のガルジューナは永い間鉱山で眠っていたので、新しい王宮の場所を知りませんでした。 勢いよく飛び出し地の大動脈に出たものの、突然ひたと止まり、 『どこの番地だ?』 と聞いてきたので、僕らは一所懸命今の...
「宝石?」 うんとうなずく我が師の顔がぽうと灯り球に映しだされました。 「エティアの王は、即位する時に代々伝わる黄金の杓丈を継承する。だから王名に『黄金の杖持つ牧者』っていう称号が必ずつけられる。それと同じようにこの樹海王朝の王たちも、王位の象徴として代々継承してたもんがあったのかもな」 「...
一面真っ赤な鉱物に囲まれた空間。 そこに横たわる太い筒のような長い巨体。 『赤の広間。美しい我の寝床』 巨体の主、緑虹のガルジューナがとても懐かしげに囁きました。 『我はここでしばし休む。さあ、地図をとってこい』 振り向けば。僕らが出てきた小部屋の入り口に、半透明の緑の膜のような...
『断る! おまえたちがその悪党ではない確証がどこに……!』 蛇は当然の反応をしましたが。ホッとすることに―― 「仕方ないなぁ。俺の弟子はほんと、優しいんだから」 僕の言葉で、我が師の顔からたちまち残酷な笑みが消え失せました。 「じゃあ弟子、ガルジューナさんはあ...
炎を吐く生き物というと、竜をまっさきに思い出します。 竜はこの大陸にかつて本当にいた生き物らしいのですが、今は影も形もありません。 寺院の図書館で見た絵本には、竜がカッと口を開けて炎を吐いてる絵があったなぁ……と、 のんびり想起する僕と我が師の周囲は――今、燃...