口づけ (後編) (自作6月/さくらんぼ)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/06/30 17:27:37
泥水まみれになった私たちは、カンナ・ジルの嫁からびっくり顔で迎えられ、浴室で湯をもらった。 私の子はまるで英雄でも見る目つきでうっとり私を眺めながら、私の背中を流してくれ、小さな手で一所懸命私の髪を洗ってくれた。 他人様の家の浴室なので「自重」せねばならなかったのが大変辛かったが、楽しみは家に帰...
泥水まみれになった私たちは、カンナ・ジルの嫁からびっくり顔で迎えられ、浴室で湯をもらった。 私の子はまるで英雄でも見る目つきでうっとり私を眺めながら、私の背中を流してくれ、小さな手で一所懸命私の髪を洗ってくれた。 他人様の家の浴室なので「自重」せねばならなかったのが大変辛かったが、楽しみは家に帰...
さくらんぼは丁寧にひとつひとつ種とヘタを取られ、さっと砂糖とワインとで混ぜられて、赤い鋼玉のようだ。「レク、がんばってるね」 私がおそるおそる声をかけると、私の子はグッと真剣な表情で拳を握って気合を入れた。「うん! メティに、絶対おいしいパイをあげるんだ!」 ……。 気づ...
のんびりと天空の島に住んでいる二人のお話です。登場人物 レク:見た目十二才ぐらいのメニスのボクっ子。レナンに変若玉(オチダマ)を飲ませて不死身の魔人にした。レナン:かつて黒き衣の導師だった。今はレクの保護者兼恋人。********************************** ...
「父さま~♪ 母さま~♪ フィリアぁ~♪」 庭園にヴィオの無邪気な笑い声が響き渡ります。 一夜明けて、この得体の知れないメニスの子を見守る人がひとり増えました。 歩行訓練をするヴィオの前方には、手招きするフィリア。母親のマミヤさん。そして父親の白の導師。微笑を浮かべる両親は、庭園に置かれた長椅...
宙に躍り、細身の剣をふるう長靴をはいたウサギたち。 眼の前で消えていく白い蝶々。 「きゅう」「きゅう!」「きゅぴ」 これは、夢? 僕は茫然と、ウサギ三銃士の動きを凝視しました。 とても物言えぬウサギだったとは思えない動作です。目にも止まらぬ素早さで飛び回り、ほとんど地に足がついていません...