アスパシオンの弟子68 開戦(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/10/24 10:36:26
アイテリオンがエティアに魔王を放って滅ぼそうとしている理由。 十中八九それは、エティアが北五州を属州としたからだろう。 メニスの里である水鏡の寺院は、北五州のほぼど真ん中の地中にある。つまり白の導師は、自分のナワバリに迫られたと感じたのだ。 もともとソートくんとの契約で渋々国家として認...
アイテリオンがエティアに魔王を放って滅ぼそうとしている理由。 十中八九それは、エティアが北五州を属州としたからだろう。 メニスの里である水鏡の寺院は、北五州のほぼど真ん中の地中にある。つまり白の導師は、自分のナワバリに迫られたと感じたのだ。 もともとソートくんとの契約で渋々国家として認...
当事者のベイヤート殿下は――自省の念を込めて、歌劇団の責任者とアズハルの肉親へ謝罪の手紙を送ってきた。 『御祖父上、私はアズハルを必ず探し出し、我が側室として宮に入れ、その子を認知する所存です。こたびの一件をどうかお許しください』 肉親への手紙にはそう書かれていたが、俺は子供が無事誕生している...
我が師アスパシオンはマミヤさんが双子を産む八年前、すなわち7337年に生まれた。 白鷹家のビエール王国がエティアの傘下に入って十七年目のことだ。 王から大公に変わって二代目の当主は、スメルニア人の正妻の他に側室を数人娶っていた。しかし我が師の母親はその妾たちの子ですらなく、当主が気まぐれに手をつけ...
夕方、俺と妖精はレンギ村をあとにして、ポチで少々東進した。 「さて、塔を呼ぶか」 地上への出口がある分岐点で止めて、右の義手につけた腕輪をいじる。 大昔の地下鉄の駅だったらしい遺跡から出て、深い森の中でしばし待っていると。山とみまがう大きな塊が、夕闇の中をずずずずとゆっくりゆっくりやってきた...
「とうちゃーく!」「機関停止っ」 ふしゅううう、と蒸気の息を吐いて、地下道を走るポチが停止した。 俺と妖精たちはこっそりザンギ市郊外に出て街道を歩き、小さな村に入った。 フードにすっぽり顔を隠した俺は、村の酒場へ直行。目的の人に会うのは、妖精たちだけだ。 樹液酒を頼んで席につき、窓辺から外を...