自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・84
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/10/11 10:01:21
ロランは宿の庭木の近くに腰を下ろしていた。時折、鼻を鳴らす息遣いが聞こえる。
――泣いているのだ……。ランドを救えた喜びか、つらい役目をやり遂げた安堵のためか。
ランドの胸が痛んだ。
一度、死を覚悟して別れの言葉を言ったのだ。助かるなどとは思っていなかったから、ど...
日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。
ロランは宿の庭木の近くに腰を下ろしていた。時折、鼻を鳴らす息遣いが聞こえる。
――泣いているのだ……。ランドを救えた喜びか、つらい役目をやり遂げた安堵のためか。
ランドの胸が痛んだ。
一度、死を覚悟して別れの言葉を言ったのだ。助かるなどとは思っていなかったから、ど...
ベラヌールの宿の主人は慈善家でもあったので、ランドの宿泊料を特別に無料にしてくれた。薬師の老人はつきっきりでランドを看ていたが、することはほとんどなかった。
ランドは食事も排泄もせず、こんこんと眠り続けていた。しかしそれは、回復へ向かう眠りではなく、確実に死へ向かう眠りだった。
(かわいそうに&...
ロランの猛進撃は止まらない。
何百という数を斬っても疲れを見せず、襲い来る魔物を無数の屍に変える。徐々に魔物の数が薄れ、とてつもなく巨大な樹の根元にロランが走り込むと、白い毛皮をした人間ほどの翼を持つ尾長猿が陣取っていた。バズズの配下のシルバーデビルだが、ロランはその名を知らない。
ロランは無...
「え?……いや」
ロランがきょとんとすると、ルナは小さく吹き出した。
「ひどいわね。私、一生懸命探したのに。……あのね、あなたとランド、衣装部屋のタンスに入って、一緒に寝てたのよ」
「えっ」
「気持ちよさそうにドレスか何かにくるまって、ぐーす...
【世界樹】
船は東を目指して進んでいた。ロランは舵取りをカイルに任せ、舳先に立って水平線を見つめていた。
ランドのいない船は静かだった。その場にいるだけで、ランドには場を和ませ、明るくする何かを持っていた。
寂しい。ロランの胸を満たすのは、冷たく凍った海の氷にも似た閉塞感だった。
ランドを...