アスパシオンの弟子75 白き衣(中編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/12/10 21:21:23
「なんだその歌声は。ふざけるな!」 ごめんなさい。護衛長様ごめんなさい。俺はほんとに。おんちで。 ぐずでのろまな魔人です。 善き魔人。 それは、主人に服従する魔人。 そして、魔力が強くて歌が上手な魔人。 目標は遠い。俺は永遠に腰布一枚のままなのか……。 「よし...
「なんだその歌声は。ふざけるな!」 ごめんなさい。護衛長様ごめんなさい。俺はほんとに。おんちで。 ぐずでのろまな魔人です。 善き魔人。 それは、主人に服従する魔人。 そして、魔力が強くて歌が上手な魔人。 目標は遠い。俺は永遠に腰布一枚のままなのか……。 「よし...
「なんだ、このちんけな魔法の気配は!」 護衛長様の怒鳴り声が白亜の聖堂に響きわたる。 「三鐘瞑想してきて、まだこの程度だと? ふざけるな!」 ごめんなさい。護衛長様ごめんなさい。俺は。ほんとに。落ちこぼれで。 ぐずでのろまな魔人です。 「その虹色の魂はガセか? 始めと全然変わってない...
冗談じゃない! 俺は焦った。 アイテリオンに操られ、しもべとして誓いを立てるなんて。 それを恐れるがゆえに何百年も隠れていたのに。あと少しというところで……! 「ウサギの魔人よ、あなたの名前は?」 俺はぺぺといいそうになるおのれに渾身の力をこめて抗った。 「...
『うわあ弟子、これなに?』 あ……お師匠さま……だ。 なんで、ここに? あ、これは……夢、か? 黒い衣の我が師はにこにこ。なんだかとっても上機嫌だ。 『でっけえ! すげえでっけえ! てかこれ、みたことある!』 ...
さんさんと降り注ぐ木漏れ日の下。 うわあ! と娘が大きな目を見開いて、切り株の上を眺める。 赤毛の青年は狂喜する娘を膝に乗せ、ぐりぐりとその金髪の頭を撫でた。 「どーだ? すごいだろ? 池で魚を釣ったんだ」 『釣ったのは私です。波動で発破をかけました』 切り株のそばに置かれた青年のリュックの...