2月自作 針・角 「灰色の技師」(後編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2016/02/29 22:59:31
剣の言う通りであった。 赤毛の女の子たちは半日たたぬ間に、青年が希望する食材をすべて手に入れてきてくれた。 材料がくるまで、青年はあれこれレシピを考えていた。 何より、喉のためになるものを。 まろやかで。痛みをやわらげるようなものを、と。「よし、作るぞ」 材料を前に気合一発。青年は腕をふるって作...
剣の言う通りであった。 赤毛の女の子たちは半日たたぬ間に、青年が希望する食材をすべて手に入れてきてくれた。 材料がくるまで、青年はあれこれレシピを考えていた。 何より、喉のためになるものを。 まろやかで。痛みをやわらげるようなものを、と。「よし、作るぞ」 材料を前に気合一発。青年は腕をふるって作...
数日で完成する。 ぼむんとおのが胸を叩く使い魔ウサギに言われたので、青年は時計が出来上がるまでの間、塔に泊まらせてもらうことにした。 螺旋階段の周りに部屋がある塔には、赤毛の女の子がたくさん住んでいる。 そのだれもがひとかどの技師なので、青年は目を見張った。ある階では金属が鋳造され、またある階では...
「あのう、こんにちは」
うっそうと繁る森の中。 剣の柄が突き出たリュックを背負った赤毛の青年が、とある塔を訪れた。長旅をしてやっとこたどりついたのであろう、そのマントはぼろぼろのくたくた。顔には疲労が色濃く浮かんでいる。 塔は一見すれば巨木かそれとも細長い形の山かとみまがうもので、壁面のもとの材質...
『ピピさんおつかれさま。進渉はどうです? 韻律は編みあがりましたか?』
『コーヒーありがとうございます、アイダさん。ええ、ほとんどできたんですけど、すごく不安です。これで理論上は次元を剥離して複製できると思うんですけど……』
『やってみないとわからないですよねえ。しかしな...
宙に飛ばされた赤い義眼が、翼ある魔天使アイテリオンの手中に収まる。 奴がにやりとしたとたん。赤い義眼がその左右の手に包み込まれ、ぱきりと――
「ちくしょう割られた!! 万事休すか?!」
奴の翼がはばたく。魔人が封じられた二つの棺に降り立ち、蓋をあけて二人の魔人を抱え出し、華麗に上昇する。振動箱を...