童話 サンタさんのお嫁さん (メリクリ・コーデ)
- カテゴリ: 自作小説
- 2016/12/07 02:45:18
その日。わしの家の郵便受けに、北の果ての果てのお屋敷からの手紙が入っておった。 雪の結晶で封印されていたから、ひと目でそこから投函されたんだとわかったよ。 手紙を開いたら、真っ白な結晶が一瞬あたり一面にいくつも飛び広がって、輝きながら消えていった。 ふわふわ浮いて透けとる氷色の紙をいろどってい...
その日。わしの家の郵便受けに、北の果ての果てのお屋敷からの手紙が入っておった。 雪の結晶で封印されていたから、ひと目でそこから投函されたんだとわかったよ。 手紙を開いたら、真っ白な結晶が一瞬あたり一面にいくつも飛び広がって、輝きながら消えていった。 ふわふわ浮いて透けとる氷色の紙をいろどってい...
「……!」
ぴんときて、弟子が飛びつくようにして指示されたところを開ける。
とたんに淡い色の眼が輝いて、顔にぱぁっと薔薇色の紅潮が走った。
「ソム! これ……アマルサの顔料?」
「そなたのものだ。使いなさい」
弟子はうっとりと、紅...
ソムニウスは二十七のとき、黒き衣の導師となった。 十歳にして捧げ子となって寺院に入り、数多の試験を通り、最長老からその名をもらうまでの呼び名は、蒼き衣のチル。もしくはヒュプノウスのチルと呼ばれていた。 すなわち「見習いのチル」、「師ヒュプノウスのものであるチル」という意味である。 「桜宮ノ花散君」...
一番弟子の出身は北五州。たしか一年の半分以上が雪に覆われる極寒の地だ。それゆえ寒さには強いのだろう。
「この寺院では、掃除用雑巾にも事欠く有様ですが。この温石だけは、たっぷり贅沢が出来ますからね。あ り が た い こ と に」
一番弟子はとても恨めしげに、壁際の三つの袋のひとつから小さな丸...
ハッと目を開けると、暗い岩の天井が迫ってきた。
分厚い岩壁に囲まれた、狭い岩窟。うがたれた丸窓から、暁の光がうっすらさしこんでいる。 四方四面、白みがかった岩壁。岩窟の寺院はみなこのような、岩をくりぬいた部屋から成っている。つまり冬となれば、部屋は氷室のように冷えきって仕方がない。
「なんとい...