Nicotto Town



銀の狐 金の蛇 7話「靴紐」(後編)



「うう……?」

 夢から覚めたソムニウスは、簡素な寝台の上で大きく息を吐いた。
 案の定、昔の記憶を夢に視た。脳内記録の再生だから、啓示ではないかもしれない。
 酔いが重く体に残っていて、頭の奥がずきずき痛む。
 花模様が彫刻された木枠の窓からみえる空は、濃い紺色。...

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銀の狐 金の蛇 7話「靴紐」(前編)

(舞台は山間の小国ユイン。神殿に泊まることになった師弟。弟子が手袋を手に入れにいっている間、ソムニウスは夢を見ます)***************
 背後に、寺院が視える。
 湖の岸辺にせり出す岩壁。そこにうがたれている無数の窓穴。
 そして目の前には、蒼い蒼い、鏡のような湖――。
 ソムニウスはき...

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自作2月 鬼  「食堂のおばちゃん」 後編

  俺が前にもまして疑問符をとばしていると。左翼の料理長がやってきて、ジャルデ陛下がお召しであると告げてきた。
 たまごのせ瓶をずいぶん堪能されたから、あたらしいレシピを考えろ、とか、そんな思し召しをいただくのかと思ったら。

「おばちゃん代理。なんかな、ついさっき、こんな報せが届いたんだが」

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自作2月 鬼  「食堂のおばちゃん」 中編

陛下のありがたい思し召しで王宮一階厨房のパン係になって、二週間すぎた。
 日がたつにつれ、俺の疑問はいやますばかりだった。なにせ食堂のおばちゃんは、たしかに食堂のおばちゃんのはずなのに、俺のことをまったくすこしも覚えていないようなのだった。

『おばちゃん?!』
『おまえは…&hell...

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自作2月 鬼  「食堂のおばちゃん」 前編

 忘れもしない。あれは五年前のこと。
 短い夏のおわりに、両親をなくした。
 父はかなりな晩婚で、俺が生まれたときには、すでに五十を越えていたらしい。心臓は丈夫だったが、脳の血管が弱っていたようだ。雪がしんしん降る夜、洗い場でたおれたままいってしまった。
 母はうさぎのように、さびしくなると死んでし...

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