銀の狐 金の蛇 10話「千の花」(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/04/24 09:52:22
ソムニウスは、暖炉の上にある絵をしばし茫然と眺めるばかりだった。 絵の中の装束は大人も子供も同じ。ということは、このユインの地独特の民俗衣装に違いない。
(カディヤの服と寸分たがわぬとは……しかしあの子の生まれは、ここではないぞ?)
一番弟子の出身地は、北五州。たしか...
ソムニウスは、暖炉の上にある絵をしばし茫然と眺めるばかりだった。 絵の中の装束は大人も子供も同じ。ということは、このユインの地独特の民俗衣装に違いない。
(カディヤの服と寸分たがわぬとは……しかしあの子の生まれは、ここではないぞ?)
一番弟子の出身地は、北五州。たしか...
二百年前といえば、ちょうどユインが国と認められたころだ。
軍事力で征服できねば「配偶者」を送り込み、婚姻同化で取りこむ――
エティアもスメルニアも、そんなことを考えたのかもしれない。
「なるほど。つまり私は、蛇の者と勘違いされてぶん殴られたわけか。二家に分かれている民は、互いに攻撃しあうほど...
「違う……!!」
ソムニウスは叫びながら、がばりと起き上がった。
幸いなことにだれかに助けられたようだ。
暖炉がばちばち燃える、暖かな部屋の長椅子に我が身が在る。
頭も額もずきずき痛むが、負傷部分に分厚く包帯が巻かれている。
すぐ脇にある窓を見やれば、外はま...
夜風が中庭に吹き降りていた、あの夜。
ゴドフリートことフーシュ殿下は、真摯な顔で憂いた。
『ジャルデ陛下に言われた。そなたは信用してよい味方、事情を話してよいと。だから腹を割って話そう。実は……我が兄、王太子フライヒの料理は、どれも塩辛い』
作る者の性格は、如...
『食聖ホーテイはなんでも食べてしまう人だったと、いわれております。
だれもがふだん見むきもしないものでも、おいしく調理してごちそうにしてしまうのです。
そんなホーテイのこどもたちもみな、遺言に従って、名だたる料理人になりました。
そのなかのひとりルーテイは、南の大国バナーラ王の料理人となり、半...