銀の狐 金の蛇 11話「口づけ」(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/05/06 21:58:40
「ソム、ごめんなさい! ごめんなさい!」
(大丈夫だ)
「大丈夫じゃないです!」
(大丈夫だよ……)
弟子が取り乱している。声をあげて泣いている。 だが暖かくてここちよくて。とても眠くて。目を開けていられない。 外套を着ずに外に出たので、体が冷えた。 今弟子が――神殿の...
「ソム、ごめんなさい! ごめんなさい!」
(大丈夫だ)
「大丈夫じゃないです!」
(大丈夫だよ……)
弟子が取り乱している。声をあげて泣いている。 だが暖かくてここちよくて。とても眠くて。目を開けていられない。 外套を着ずに外に出たので、体が冷えた。 今弟子が――神殿の...
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(ここからおばちゃん代理視点となります)
「俺もさ、よくわからないのよ」
ウサギ技師が天をつくような塔から望遠鏡を眺める。
ぎろんぎろん見渡して、それからコック姿の赤毛男――すなわち俺に先っぽを向けて。レンズ越しに見える赤い目をぱちくり...
しかしそれでも相手は全然驚かず、「こいつほんとにおいしくなさそうだよね、リンゴちゃん♪」の一点張りですよ。むかつくったらありゃしませんでした。
「あのう、あの谷は、メンジェールとはどえらく離れてますけど……エティアとスメルニアの国境に、メンジェール王国始祖たる食聖の祠...
(前編・中編は赤猫剣視点です)
「さて困りました」
そうですよねえ、と私は相槌を打ちました。
「あなたが食べた魂を引き出せと言われても」
困り顔の猫族紳士が腕組みをしてがっくり。この方は、私と共にわけのわからぬ連中に拉致されました、猫目さまです。
「私は、あなたの修理はできますが、ご主人...