Nicotto Town



2月自作 針 「帰還」

 ちくちく。ちくちく。  きゃ。痛い。痛いです。なにするんですか?!  刀身に走る嫌な感触で、私は目覚めました。  なんでしょう、けっこう素敵に、気持ちよく、みのむしのようにすやすや眠っていましたのに。  私、猫目さんが丹精こめて作って下さった鞘を、被っているはずなのですけど。  黄金牛...

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銀の狐 金の蛇30 「エピローグ」

 ユインから密書が来たその日。夢見の導師と四人の弟子は|朝餉《あさげ》を|絶《た》って、湖の岸辺で鎮魂の歌を歌った。 それは遠くふたご山の小さな邑へ捧げる、哀悼の歌だった。 それからソムニウスはカディヤと私室に入り、最長老に預けていた髪を調べ倒した。あのレヴェラトールのこと、髪になにか施していても不...

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銀の狐 金の蛇29 「青き花」(後編)

 夢見の導師は、急いで鉱山の下層にもぐった。(なぜにもっと早く気づかなかったのだ!) 臍をかむ思いで、低木にびっしり咲いている青い花をごっそりつみとる。弟子もフェンも手伝い、みなで懸命に花をとり、いくつものかごに花をいっぱいにした。 その途中で、フェンもたおれた。彼もまた、同じ病に侵されていたのだ。...

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銀の狐 金の蛇29 「青き花」(前編)

「ソム……」 熊の毛皮がもふりと動く。 あたたかな毛の下から、白い腕が伸びてきた。 つややかに光る、くれない色の爪。 寝台にねそべるソムニウスは微笑し、その手をとって口元に近づけた。 やさしく口づけてやると、毛皮の下から甘やかな息がもれてくる。「宿泊代がタダって良いよなぁ...

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銀の狐 金の蛇28 「女神」後編



 こうして夢見のソムニウスは見事よみがえり、おのが目で新しく湧いた湖を見ることができた。 地下から汲まれる水の勢いは、強くもなく弱くもなく。地に沈んだ神殿をすっぽり水に埋めて輝いていた。「ソム! すごいです、ソム!」 嬉し涙に濡れる弟子は、この上なく師をほめ称えた。 彼の目には女神の言う通り、師...

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