自作八月/逢瀬・夏の虫 「蛍籠」
- カテゴリ: 自作小説
- 2019/08/31 20:54:10
「今夜もよろしくね」 佳紫子(よしこ)が格子を下げると、御簾の向こうにいる御方が腰を上げた。 左大臣家の姫である女主人は、いそいそと単衣を脱ぎ捨てて、自ら少年がまとう水干に腕を通し、ぬばだまのごとき長い黒髪をひとつに結わえた。その手際の良さに佳紫子は呆れた。 「姫様、またもや...
「今夜もよろしくね」 佳紫子(よしこ)が格子を下げると、御簾の向こうにいる御方が腰を上げた。 左大臣家の姫である女主人は、いそいそと単衣を脱ぎ捨てて、自ら少年がまとう水干に腕を通し、ぬばだまのごとき長い黒髪をひとつに結わえた。その手際の良さに佳紫子は呆れた。 「姫様、またもや...