Nicotto Town



自作八月/逢瀬・夏の虫 「蛍籠」

「今夜もよろしくね」  佳紫子(よしこ)が格子を下げると、御簾の向こうにいる御方が腰を上げた。  左大臣家の姫である女主人は、いそいそと単衣を脱ぎ捨てて、自ら少年がまとう水干に腕を通し、ぬばだまのごとき長い黒髪をひとつに結わえた。その手際の良さに佳紫子は呆れた。 「姫様、またもや...

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