自作5月 菖蒲 「ねこま憑き」後編
- カテゴリ: 自作小説
- 2020/05/31 23:52:56
それからぶつぶつと文句を垂れ流しつつ、うちは仕方なく、姫さまの御家が抱えてはる絵師の中で、一番の腕を持ってはる御方に白羽の矢を立てました。 それは賀茂という名の方で、姫さまの父君のためにしばしば、いとうるわしい天体の図などを、色鮮やかに描いてはるのです。 事情を話しますと、賀茂さまはニ...
それからぶつぶつと文句を垂れ流しつつ、うちは仕方なく、姫さまの御家が抱えてはる絵師の中で、一番の腕を持ってはる御方に白羽の矢を立てました。 それは賀茂という名の方で、姫さまの父君のためにしばしば、いとうるわしい天体の図などを、色鮮やかに描いてはるのです。 事情を話しますと、賀茂さまはニ...
一つ下の条《じょう》にお住いの若君が、ねこま憑きにならはった。 という噂が舎人《とねり》から舞い込んだもので、うちの姫さまは本日、ころころ笑い転げはっております。 畳台に扇をバシバシ、何ともはしたないご様子にて、乳母《めのと》さまも、女中のうちも、呆れ顔。せやけどまあ、いたしかたござい...