11月自作 (冬支度) お米のお札2/2
- カテゴリ: 自作小説
- 2020/11/30 23:55:30
その晩も女の良人は床から出られず、苦しそうにうんうん唸っていた。 何日も寝たきりのせいで、手足の節々が痛むという。 かわいそうにと女は、娘と一緒に良人の体をさすってやった。 そうして翌日、日が傾くのをじりじりそわそわ待って、市場へ出かけた。 五色の吹き流しが下がるお店に...
その晩も女の良人は床から出られず、苦しそうにうんうん唸っていた。 何日も寝たきりのせいで、手足の節々が痛むという。 かわいそうにと女は、娘と一緒に良人の体をさすってやった。 そうして翌日、日が傾くのをじりじりそわそわ待って、市場へ出かけた。 五色の吹き流しが下がるお店に...
火鉢を出したのだけれど、炭がなかった。 ほんわりと柔らかな熱を手のひらに当てるのは心地のよいもの。雪が降ってからなぞと悠長なことを思わずに、毎年蔵から引っ張り出している。 母さんごめんなさいと、娘が厨房で、両手にはあはあと息を吹きかけながら茶碗を洗っていた。吐く息が真っ白だ。 「買いに行...
がら開きのトラックの窓から、びゅうびゅう風が吹き込んでくる。 青空の下に、真っ赤な砂漠が広がっている。 道なき道を、トラックは走る。ひたすらに。地平線の向こうを目指して。 つらなる砂丘。孤空を飛ぶ鳥。はるか遠くに、ラクダの列。 えっ? 隊商? これは…&h...
作るのは簡単なのです。 思いっ切り、この白銀の管を吹く。 ほんとうにただそれだけで。 種も仕掛けもございませんよ。 1たす1は2であるように、夜が明ければ朝が来るように、 これは当然の結果なのです。 管の先にまっかに溶けたガラスを付けて、思い切り吹く。 そうすれば、しゃぼんのように膨ら...