仮想劇場『台風のヤツめ』
- カテゴリ: 自作小説
- 2025/09/14 23:00:28
南からやってきた容赦のない雨風は僕らの町に多大な迷惑をかけて東の彼方へと逃げて行った。 通りに出るとどこかから吹き飛ばされたであろう『Ms.エリーモア』の立て看板が自販機の横で息絶えていた。アスファルトでずたずたに削られたその写真の女性にはもうかわいらしさの欠片もない。ただただ無慈悲であって無...
南からやってきた容赦のない雨風は僕らの町に多大な迷惑をかけて東の彼方へと逃げて行った。 通りに出るとどこかから吹き飛ばされたであろう『Ms.エリーモア』の立て看板が自販機の横で息絶えていた。アスファルトでずたずたに削られたその写真の女性にはもうかわいらしさの欠片もない。ただただ無慈悲であって無...
夏も8月後半に入るとどこかそっけなく思える。例えるなら口やかましかった太陽の質がちょっとだけ変わったような感じだ。同時ににセミたちの自己主張も終わりに近づく。 そのことを「少し物悲しいね」と10畳間の女主さんは漏らした。僕は何も答えずただただ押入れの天井を見上げている。
故郷から街に戻りもう3...