Nicotto Town



ミッドナイト・ブルーの遺言

 地下へ続く階段を降りればそこは 地上よりも深い 孤独の吹き溜まり。
アルトサックスが 真夜中の静寂を切り裂き
ドラムのブラシが 誰かの後悔を 砂のように散らしている。カウンターの端で 俺は「オン・ザ・ロック」を頼む。
丸い氷が グラスに触れる音。
それが この不確かな夜に響く 唯一の真実だ。ピアノ...

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遠い昔の思い出で


  モンパルナスの審判琥珀色の液体が グラスの底で揺れている。
向かいの席には 誰もいない。
だが 使い古されたタイプライターの残響と
強い煙草の匂いが そこには確かに居座っていた。「書くことは 死ぬことだ」
そんな幻聴が 冬の隙間風に混じって届く。
俺は 何も答えず ただ酒を喉に流し込んだ。
火...

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凍りついた光

空には 剃刀のような月。
その鋭い光が ビルの壁を 無造作に削り取っている。
星たちは 都会の煤にまみれながら
助けを呼ぶことも忘れ ただ 黙り込んでいた。俺は 古いジャズが流れる ダイナーの窓際で
冷めたコーヒーに 一粒の角砂糖を落とす。
溶けてゆく白が 誰かの誠実さのように
あっけなく 黒い苦み...

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通過待ちの孤独

錆びたベンチが、冷えた鉄の匂いをさせていた。
蛍光灯は、神経質な瞬きを繰り返し
誰もいないホームを、青白く、不健康に照らしている。時刻表には、もうどこへも向かわない数字が並んでいる。
約束も、後悔も、定刻通りにここを通り過ぎていった。
残されたのは、自動販売機の唸る音と
足元を這うように流れる、湿っ...

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灰色の境界線

視界は すべてミルク色の闇に溶け
世界から 輪郭という輪郭が 剥がれ落ちていた
防波堤に腰を下ろせば 冷えた湿り気が
安物のコートを 容赦なく重くする。ボーッ、と。
目蓋の裏まで 震わせるような 低い霧笛。
それは どこかへ向かう船の合図か
それとも 帰る場所をなくした 男の独り言か。海は見えない。...

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