Nicotto Town ニコッとタウン

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名もなき防風林

湿った夜風が 誰かの軒先を叩こうとする
俺はただ その風の通り道に背中を預け
煙草の火も点けず 闇の一部になって立っている「おやすみ」
その一言が 家々の窓から零れ落ちて
温かなシーツの中に 静かに沈んでいく
その安らかな寝息を 一秒でも長く守るために
俺の掌は 冷たい鉄柵を握りしめている助けを呼ぶ...

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コーヒーの熱が逃げるまで

冷えたガード下 誰かが忘れたビニール傘
折れた骨を直す手立てもなく ただそこにある
「世界は残酷だ」なんて 今さら言うまでもないが
せめてこの 自販機の缶コーヒーくらいの熱は
誰かの指先に 届いてもいいはずだ俺の掌は もう何も掴めはしない
誰かの涙を拭うには あまりに荒れてしまったが
向こうから歩い...

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風を通す

飲み干したコップの縁に 一滴の重みもない
窓の外では 名前も知らない誰かが泣いているが
俺の鼓膜を震わせるのは 遠い換気扇の唸りだけだ「明日はきっと」
そんな甘ったるい期待は とうに胃酸で溶かした
期待を捨てるたびに 身体は少しずつ軽くなり
今では 通り雨すら俺を素通りしていく握りしめる拳の中に 守...

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錆びたライターと午前二時の戯言

午前二時。
氷の溶けたウイスキーは、
俺の人生みたいに、とっくに薄まっている。バーテンダーは何も聞かない。
それがこの店のルール。
鏡に映った男は、
少し笑って、また一つ、くだらない嘘をつく。「愛? そんなの、街灯の下に落ちてる
 吸殻と同じさ。誰も拾わない」愛した女は、霧の中に消えた。
俺に残され...

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神々と遭遇

数千億の波束が崩壊する刹那
神々は、まだ誰にも見られていない。
確率の雲のなかに横たわり
「有る」と「無い」のあわいで微睡んでいる。空(くう)を裂いて差し込む視線が
その絶対的な沈黙を暴くとき
世界は一つに凍りつき
無限の可能性は、ただひとつの現実に収束する。シュレディンガーの指先が触れるのは
生と...

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