青い空を、風にむすばれ
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/06/27 17:53:39
Iその日も 森の教会は静かに息づいてゐた
母と小さな妹は 木漏れ日のなか
あしたの幸福を ただ無邪気に信じてゐた
けれど まばゆい光がすべてを白く染めたとき風は一瞬にして 牙をむく獣となり
幼い二人のからだを 天空へとささらひ去つた
ちぎれた青い葉と 教会の瓦礫のなかに
生と死のあわひを 二人はただ...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
Iその日も 森の教会は静かに息づいてゐた
母と小さな妹は 木漏れ日のなか
あしたの幸福を ただ無邪気に信じてゐた
けれど まばゆい光がすべてを白く染めたとき風は一瞬にして 牙をむく獣となり
幼い二人のからだを 天空へとささらひ去つた
ちぎれた青い葉と 教会の瓦礫のなかに
生と死のあわひを 二人はただ...
お母さん あなたのやさしい手はもうなくて
五月の庭には ただあなたの好きだった風がふく
あなたが遺(のこ)していった このぼくのからだには
いまも静かに あなたのかなしみが流れているそれは見えない糸のように ぼくの骨にからみつき
ふとした夕暮れに ちいさな痛みを連れてくる
ぼくらは同じひかりに いま...
見知らぬ夏のひかりが ぼくの記憶をたたく
あの日 ぼくがまだ生まれるよりもはるかむかし
ひとつの都市が灼かれ 人々の影が石に融けたとき
ぼくの血のなかに しずかに流れこんだものがあるそれは微かな微かな 追憶の澱(おり)のようでいて
五月のわかばの梢(こずえ)を ふるわせる風のよう
お母さん あなたの...
あわい葡萄色の夕暮が セーヌの川面を染めてゆく
春の嵐の名残りの風が 冷たく水を揺すぶるとき
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
きみの来ない川辺の古本市(ブキニスト)の横にたたずむ外套のポケットの奥 指先が触れる一通の未開封の手紙
きみが遺(のこ)した最後の言葉を 僕はまだ読むことができな...
激しい雨が ステンドグラスを叩き割らんばかりに
春の嵐は 昏(くら)い聖堂のなかにまで吹き荒れる
僕は ただひとりの寂しい個影(かげ)となり
白い花びらに埋もれた きみの棺のまえに立ちつくす冷たくなつたきみの胸元には 一通の未開封の手紙
僕が放つた想いは もう二度と読まれることはない
やがて厳かに ...