そこには だれも知らない風が吹いてゐた
木漏れ日の斑(まだら)が 青い苔のうえに
失はれた古い国の言葉を ひとつひとつ
静かに書きつけては また消してゆく見知らぬ名が刻まれた 白い石のならび
それらはみな 遠い海を渡ってきた記憶
いまはもう ねむむ(眠む)ことの寂しさもなく
梢のささやきを 子守唄に...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
そこには だれも知らない風が吹いてゐた
木漏れ日の斑(まだら)が 青い苔のうえに
失はれた古い国の言葉を ひとつひとつ
静かに書きつけては また消してゆく見知らぬ名が刻まれた 白い石のならび
それらはみな 遠い海を渡ってきた記憶
いまはもう ねむむ(眠む)ことの寂しさもなく
梢のささやきを 子守唄に...
1僕たちの記憶が しずかに昏(く)れてゆくころ
そこには ひとつの青い湖(みづうみ)があった
風は かすかなさざめきを連れて
失われた季節の お話をくりかえしていたあなたは あんなに小さかった硝子の壺を
その細い指先から そっと放した
そは(其は) あふれるほどの涙をあつめて
ひそかに胸の奥に しま...
かすかな風が…… ひそやかに
わたしの頬を 通りすぎる
あの日のやうに 眼下にひろごる雲海のなか
あんなに深かつた夜の闇が いまはもう溶けてゆくここは最初に ふたりで出逢つた場所
いまは独り 冷めたき風に立ち尽す
ちぎれゆく白き雲の合間に
失はれたものたちの やさしい影が...
かすかな風が…… ひそやかに
わたしの窓を 通りすぎる
消えかけたランプのまたたきのなか
あんなに深かつた夜の闇が いまはもう溶けてゆくあれは だれかの追憶(おもひで)だらうか
それとも 届かなかつた星のなごりか
冷めた珈琲の苦みの底に
失はれたものたちの やさしい影がに...
雲と海の境界は消え失せ、白く冷たい静寂が広がる。
独り立つ空の下、透明な風が頬を撫でてゆく。
失くした夢の続きを紡ぐように、私はそっと呟いた。もうどこへもゆくまい
ここは空の果て、約束の地
光る波頭が私を呼んでゐる空は青く澄みわたり、世界はただ静かに眠ってゐる
私はもう、何をも恐れない
ただ風を聴き...