誰もない森の夏雲によせて
- カテゴリ: 小説/詩
- 2026/07/25 16:11:39
しづかな森の 梢のうえに
大きな雲が 湧きのぼつてゐる
だれも知らない 古いみづうみのやうに
青い空に しろく たたずんでゐるそこには 僕のあしあとすらなく
ただ ひそやかな風のゆききばかり
くりかへす言葉は 木々の葉にのまれて
遠い記憶のやうに ただ濁つてゆくおまへはそこから 僕を見てゐるのか
あ...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
しづかな森の 梢のうえに
大きな雲が 湧きのぼつてゐる
だれも知らない 古いみづうみのやうに
青い空に しろく たたずんでゐるそこには 僕のあしあとすらなく
ただ ひそやかな風のゆききばかり
くりかへす言葉は 木々の葉にのまれて
遠い記憶のやうに ただ濁つてゆくおまへはそこから 僕を見てゐるのか
あ...
蓄音機から流れる「サマータイム」の物憂げな調べが
あの静かな喫茶店の空気を 優しく揺らしていた
コーヒーの香りのむこうで 私たちは果てのない未来を信じていたあの日から 街の景色も 私の髪に混じる白髪も変わっていったけれど
土砂のむこうへ旅立った彼らは 今もあの夏のなかに生きている
少しも色褪せること...
あんなに優しかった喫茶店のマスターも 大好きな友達も
真夏の烈日のもと 無慈悲な崖崩れの土砂に埋もれてしまった
街に立ち込めるあの重い死臭を 私の鼻腔は今も忘れることができない日常のあたたかな灯りは 一瞬にして濁流と土に塗りつぶされ
語り合った言葉も 響き合っていた笑い声も すべてが奪われた
この過...
なぜ私がここに生きているのか その問いが今も胸を重く縛りつける
救えなかったあの人々の影が 冷たい泥の底から私を呼ぶようで
私は今も あの戦場のような夜明けのなかに立ち尽くしているこの命の重みは あまりにも苦しく あまりにも不条理で
生かされた我が身を責める涙は 今も乾くことがない
それでも あの朝...
濁流のなかに消えてゆく あの人々の叫びが今も耳を離れない
伸ばされた手を 私は掴むことができなかった
ただ自分と 愛する家族の命をこの腕に抱きしめるだけで背負いきれない後悔が 冷たい泥のように心に深く降り積もる
なぜ私はここに生き残り あの人たちは逝ってしまったのか
答えのない問いが 戦場のような街...