厭な噺(しょうせつ)
- カテゴリ: 小説/詩
- 2012/07/03 00:11:49
確かあれはまだ私が6歳ほどのころであり、夏の匂いが残る9月の上旬のことであった。
今は亡き父に手を引かれとある屋敷へ訪れたことがある。
何故その屋敷に出向いたのかはすでに忘れてしまったが、その屋敷で体験したことはあれから五十数年たった今でも鮮明に思い出せる。
その屋敷はとても大きく、またそれに比例...
御狐様より狡猾に、御狗様より独善的に。
確かあれはまだ私が6歳ほどのころであり、夏の匂いが残る9月の上旬のことであった。
今は亡き父に手を引かれとある屋敷へ訪れたことがある。
何故その屋敷に出向いたのかはすでに忘れてしまったが、その屋敷で体験したことはあれから五十数年たった今でも鮮明に思い出せる。
その屋敷はとても大きく、またそれに比例...
俺は、あの後二度とあの駅に行かなかった。
別に避けていたわけじゃない。
いや、心のそこでは避けていたのかもしれない。だが、避ける避けない云々ではなく、行くことが出来なかったのだ。駅で駅員に変な別れをした後、急に父親の転勤が決まったと知らされた。
行き先はイギリスのロンドン。計画していた高校受験から...
目の前のなにもない空間を悠々と魚が泳いでいる。
別に俺が海に潜りスカイダイビングを楽しんでいるわけではない。
ただ空中、つまり酸素と二酸化炭素、窒素、アルゴンなどが絶妙な感覚で配分された空気の中を泳いでいた。
それだけではなく、その不思議な魚の背後には大きなライオンが大きなあくびをしながらけ...
ものすごく昔、俺がまだ幼稚園にいた頃、俺は大人になりたかった。
大人達はとても背が高くて俺たちの見えないものが見えるんだろうって思ってた。
だって、お父さんに肩車してもらうととても空が近くて、遠くまで見渡せただろう?
肩車して見せてもらった景色はあの時の俺には高すぎて少し怖かったけれど。
...
平安時代?
「平安時代ってあの聖徳太子とかがいるやつ!?」
「聖徳太子は飛鳥時代ね。」
「...。まあ、昔だろ。」
「そうだねー。」
呆れたような顔をしながら駅員は再び扉を閉める。
「マジで!?嘘だろっ?」
「だいたいロッカーが外に繋がってる時点でおかしいじゃない。そんくらい信じてよ...