風のひかる うららかな昼
牧場のすみに 小さき碧(あお)のひと群れ
あかるい空のしたで ひっそりと
それは誰も知らぬ ちいさな夢の形をしていた私は手折ることをためらふ
その青が あまりに淡く あまりに脆く
時を止めてしまふやうに思はれたから
ちぎれた雲の ひとかけらみたいに貴方は言つた 「忘れないで...
風のひかる うららかな昼
牧場のすみに 小さき碧(あお)のひと群れ
あかるい空のしたで ひっそりと
それは誰も知らぬ ちいさな夢の形をしていた私は手折ることをためらふ
その青が あまりに淡く あまりに脆く
時を止めてしまふやうに思はれたから
ちぎれた雲の ひとかけらみたいに貴方は言つた 「忘れないで...
Ⅰ窓のそとは うすもも色のゆうぐれ
ひくく ひくく 風が鳴ってゐる
ぼくは 古い手帳を閉じて
あをざめた星が ともるのを待っているしづかな部屋の かげのなかで
眠り姫は けふもわらはない
その睫毛(まつげ)に ひかりがふれても
その唇(くちびる)に あしたの予感がゆれても姫はただ 失はれたものの名前...
五月の風は 塩の香りをはこんで
坂道をのぼり この静かな丘にたどりつく
白い十字架のむこう ひろがる港には
名も知らぬ船たちが わかれの汽笛をひびかせ
空の青に かすかな亀裂をのこしていくわたしは 錆びた鉄柵に手をかけ
遠い異国の名が刻まれた 石の肌をみつめる
かつてここで 誰かが抱いた郷愁(ノスタ...
五月の陽ざしは あまりに明るすぎて
窓枠に切りとられた わたしの部屋を
透きとおる 静かな水底のように沈ませる
風はときおり カーテンの裾を翻し
どこかへ わたしを連れ去ろうと誘うけれど……ああ あなたはもう この風のなかにいない
あのひ 雲雀(ひばり)の歌を聞きながら
...
風のなかに だれもいない客車をひいて
銀のレエルは 光のなかへ 消えてゆく
青いあざみの花が 窓をのぞき
ひび割れた椅子に ひるねの影をおとす汽笛を鳴らしておくれ なつかしい声で
あの遠い 音楽のような 村のために
けれど 石炭の熱(いき)は やさしくさめて
機関車は ただ草原の波を わけてゆくどこ...