Nicotto Town


錆猫香箱日和


読んでいただき、ありがとうございます。なるべく目立たないように、ひっそりこっそり更新してます・・・。抜き足差し足にゃふっ・・・・。         




夕空が晴れたなら Ⅰ 

バスから降り立つと、目の前には灰色のビルが林立し

せわしなく通りを行きかう人々の流れるさまが目に飛び込んできた。

霧のような雨が降っていてビルも人の群れも白く煙っている。

久しぶりに見る生まれ育った都会の光景はまるでユトリロの絵のようだ。

歩道の植え込みには紫陽花が色とりどりに咲き、

モノ...

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<悪い奴らの章>

『明日の婚礼で王子を狙撃せよ』

という姉達の命令に人魚が苦しんでいるのと同じ時刻・・・

船内の一室に目立たぬように寄り集まった3人の宦官達・・・・・



宦官というのは違反申告されたものなどや罪を犯したものに対する極刑で

男性の生殖機能を奪い、去勢した犯罪者を奴隷として使役するという

非常...

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<人魚の嘆き>

「何事だ、この騒ぎは?」

「はっ、先ほどエクレーヌ様がおひとりで甲板をお散歩されているところを

人魚に襲われ、エクレーヌ様を庇った兵がひとり犠牲になったようです。

船内ですれ違った時エクレーヌ様にはあまり海に近づきすぎないように

申し上げておいたのですが、案の定・・・」

「それで、エクレー...

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<人魚の章>

夜更けの海は凪いでいた。

船室の小さな窓の向こうに、真っ黒な海が月明かりに照らされて

白い波頭を輝かせている。

明日もきっと、雲ひとつない晴天に違いない。

明日・・・・・・

明日、その晴天の下で、人々の祝福をうけながら

王子様と隣の国の王女様の婚礼と王子の王位継承の式がとり行われるのだ。...

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思い出の本<旅立ち>

「とうとう行く決心をしたんだね」

頭上から降ってくる声に、僕は思わず足を止めて上を振り仰いだ。

カラスだ。

「まさか本当に旅に出るとは思わなかったな。

自分がいなくなったらおじいさんが独りぼっちになるからってずっと言い続けてたろ」

言いながら、カラスはふわりと僕の目の前に舞い降りてきた。
...

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