しずかな夕暮れの 風のなかに
ぼくらは み失った森をさがしてゐた
梢のあいだから こぼれる光は
淡いみどり色の つめたい涙のやうにかすかなせせらぎが 歌をうたってゐる
むかし誰かが 忘れていった古い歌を
きみは耳をすまし 優しくほほえむけれど
そのかげは もう夕闇に溶けはじめてゐるすべては うたかた...
しずかな夕暮れの 風のなかに
ぼくらは み失った森をさがしてゐた
梢のあいだから こぼれる光は
淡いみどり色の つめたい涙のやうにかすかなせせらぎが 歌をうたってゐる
むかし誰かが 忘れていった古い歌を
きみは耳をすまし 優しくほほえむけれど
そのかげは もう夕闇に溶けはじめてゐるすべては うたかた...
あをい夕闇の すそをひいて
大きな三日月が かかつてゐた
それは まるで 銀のしづくのやうに
ひそやかに 空を わたつてゆく風は 梢を やさしくゆすり
わたしたちの むかしのものがたりを
だれもゐない 森の奥へと
そつと はこんで ゆくのだらうかきみのひとみの やさしい光
ぼくのむねの ひとすじのさ...
冷たい雨が、オフィスを兼ねた安アパートの窓を叩いている。
ネオンの灯りが、割れた硝子のように床へ散らばっていた。
机の上には、埃をかぶったバーボンのボトル。
そして、決して開けることのない、紫色の古いラベルの瓶。「ライラック・ワイン」お前はそう呼んで、悪戯っぽく笑っていたな。
あの春、街外れの古い樹...
ひとひらの言の葉が空に舞ひあがり
つめたい風はそれを遠くへはこぶ
森の葉はさやぎ 草はひそかに囁き
言霊は光のなかでやはらかく息づくおまへが口にしたちいさな祈りは
いつしかひかりの環(わ)となってひろがり
しづかな夕べの空にむすばれてゆく
なみだのあとには美しい虹がかかるやうに私はただ 窓辺によりか...
ひとつの言の葉をちぎつては風に放つ
それは青い空の涯にきえてしまふのだらうか
それとも誰かの耳朶をかすめて
遠い日の記憶をふたたび蘇らせるのだらうかわたしはまつすぐに歩きつづけていた
いつかのやうに夕映えのなかで口笛を吹きながら
道は草に埋もれ 雲はちぎれてながれ
すべてはうつろふ影のやうであったの...