■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値(13)
- カテゴリ: その他
- 2009/12/04 12:38:49
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (10)
今最近時の佳作の中で、便宜のため『早稲田文學』に載つたものゝ一二を取り出せば、正宗白鳥氏の『何處へ』の中で、主人公健次と友人織田とが救世軍の説教を聽いた後のところ、健次が
「面白いぢやないか、彼奴は地球のどん底の眞理を自分の口から傳へてると確信...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (10)
今最近時の佳作の中で、便宜のため『早稲田文學』に載つたものゝ一二を取り出せば、正宗白鳥氏の『何處へ』の中で、主人公健次と友人織田とが救世軍の説教を聽いた後のところ、健次が
「面白いぢやないか、彼奴は地球のどん底の眞理を自分の口から傳へてると確信...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (9)
之れを作家の態度覺悟の上から見ると、恰も近時の作風と相反することゝならう。外形の力で内容を増加せんとする態度と、内容以外に一毫も外形の寄與を許すまいとする態度と、筆を執る時の氣持が違ふ。又表面に見えてゐる事柄だけを面白く書かうといふ態度と、其の背...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (7)
一字一句皆洗練せられて、是れだけづゝ別々に味へば、含んでゐたいやうな甘味がある。けれども詮ずるに作者がこしらへて言はせた言葉といふ埓をば破り得ない。見物を前に据えて置いて、さてうまい事を言つて見せるぞと舞臺に見えを切つた時の臺詞である。それだけの...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (6)
又は『金色夜叉』で例の熱海の海岸のくだり、貫一の詞の
吁、みいさん、かうして二人が一處に居るのも今夜ぎりだ。お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜ぎり、僕がお前に物を言ふのも今夜ぎりだよ。一月十七日、みいさん、善く覺えてお置き。來年の今月今夜は、貫一...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (5)
『多情多恨』の中で最もおもしろいと言はれるのは葉山といふ副主人公の通りものと、並はづれてうぶな鷲見柳之助といふ主人公との對照であるが、取り分け第三節のあたりが喝采を博したと記憶する。たとへば柳之助が愛妻を喪つて淋しさに堪えずして、葉山をたづねた會...