過去 の話_消えない光
- カテゴリ: その他
- 2026/04/23 13:39:23
母は、二つの過酷な敵と戦い抜きました。
ひとつは体を蝕む病、もうひとつは記憶を奪い去る病です。記憶が薄れ、言葉が消えていく日々の中で、母は私たちが知っていた「かつての姿」を少しずつ手放していきました。
けれど、最後まで奪われなかったものがあります。
それは、生きて、ここに在り続けようとした、母の魂の...
ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。
母は、二つの過酷な敵と戦い抜きました。
ひとつは体を蝕む病、もうひとつは記憶を奪い去る病です。記憶が薄れ、言葉が消えていく日々の中で、母は私たちが知っていた「かつての姿」を少しずつ手放していきました。
けれど、最後まで奪われなかったものがあります。
それは、生きて、ここに在り続けようとした、母の魂の...
冷たい雨のなか、お待たせして申し訳ありません。
ここであなたと向き合うのも、これが最後になりますね。傘は差さないでください。
あなたの美しい横顔が、雨粒で滲んでしまうのは忍びないですが、
今の私には、その涙を拭う資格さえ残されていないのです。思えば、随分と遠いところまでご一緒してしまいました。
あな...
風が どこからか運んできた
優しい ひそやかな 光のつぶ
それは 生垣をあふれるように
うす黄色の 小さな波となってあなたは 誰を待っているのか
棘のない しなやかな枝をのばし
午後の しずかな日だまりのなかで
あんなに 無邪気に わらっているあぁ 僕の心の 古い窓辺にも
こんな風に 花が咲いた日が...
風が あんなに優しく
僕の部屋の窓を 叩いています
淡い光を透かした うすい絹のように
それは 春という名前の 見知らぬ訪問者です僕は 机の上の書きかけの詩を
風の吹くままに 委ねてみようと思います
風は 遠い山々の 冷たい雪の記憶と
まだ見ぬ野原の 若草の歌を 運んできてくれるああ 昨日までの僕の...
あ、風。春の風でございます。
なんて意地悪で、お節介な風なのでしょう。
窓を開けた途端、私の部屋に溜まった、あの古臭い憂鬱を、ひょいと攫っていこうとするのです。「もう春ですよ。外へ出なさい」
そう囁く風の指先は、不躾なほどに温かく、私の怠惰な頬を撫でまわします。
庭の桜の蕾を、あんなにせっかちに揺り...