自作5月 『燕 「哀しい贈り物」』1/3
- カテゴリ: 自作小説
- 2018/05/31 22:56:58
目を開くと、白い煙があたりに立ちこめていました。 とてもけむたい空間で、がしんがしん、奇妙な機械音が聞こえてきます。 一体何の音でしょうか? 「私」は自分の手足を、しげしげ眺めました。 黄色っぽい肌。ぴちぴちで、結構指が長い、どちらかといえば細くて、不器用ではなさそうな手。まっくろな床にひた...
目を開くと、白い煙があたりに立ちこめていました。 とてもけむたい空間で、がしんがしん、奇妙な機械音が聞こえてきます。 一体何の音でしょうか? 「私」は自分の手足を、しげしげ眺めました。 黄色っぽい肌。ぴちぴちで、結構指が長い、どちらかといえば細くて、不器用ではなさそうな手。まっくろな床にひた...
「俺の歯、銀貨になってた!」 翌朝、蒼き衣の弟子たちが集まる大食堂で、昨日歯が抜けた子が嬉々として友達に自慢した。 「さすがに金貨じゃなかったけど、うちの妖精、奮発してくれたよ! 船頭に何頼もうかな~」 周りの子がうらやましがるそのすみっこで。セイリエンの幼い弟子は、なんとも幸せそ...
ウサギをもらって数日後。幼い弟子はいつものように、小食堂で師の夕餉の給仕をした。 おかわりのパンをよそったり、木の杯に葡萄酒を注いだり。そうして務めが終わると大食堂でひとり、パンと塩漬け魚をかっこんだ。 他の子たちは仲よさそうに席を固めているが、幼い弟子はいつもひとり。すみっこ...
寺院に入ったとき、その子どもの前歯はなかった。 新しい歯がなかなか生えてこなかったのは、まだその時期ではなかったのに無理に取られたからだ。育ての親だった叔父がわざと、ペンチでぎりりと引っこ抜いたのである。 夜ごとやってきて金を落としていく客から頼まれたそうで、叔父は断れなかったらしい。とはいえ...
格子をあげると、しののめの空が鮮やかに、薔薇色に染まっているのが見えた。 紫明(しあ)のおろしが、びゅうと吹きこんでくる。 白い寒気が入るやろと身構えた狐目の婦人は、風のぬるさに驚いた。
「なんやこの、柔らかな熱(いき)れは。ぬるすぎやわ」
用意周到、裏地ぶ厚い唐衣をぎっちり重ねた上に、裳ま...