Nicotto Town



思ったこと、感じたことの日記

11月期小題「霜/気持ち」

居間にパチパチと囲炉裏のはぜる音が響く。奥の間では、女房のおさきが小さな寝息を立てている。
目覚めた辰之助は、小さくなった火種に小枝を差し込むと、どてらを羽織り、土間に下り、そっと戸を開けた。空にはまだ星が煌煌と光っていた。
辰之助は、薄っすらと紫色に染まり始めた水平線を見つつ、耳をすませ、風と波の...

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10月期小題「裂ける/奇跡」

「救世主よ、早くここから立ちましょう。グズグズしてたら追い付かれてしまいます」
軍が迫ってきた…殿の物見から報告を受けた族頭のルベンは、対岸に向かって座ったままのモーセに焦りの声で訴えた。早く入り江を迂回しようと言うのである。
対岸まではほんの100mほどしかないが、海水が東西に細長く...

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9月期小題「バラ/人選ミス」

「お母さん、“バラ”って聞いて何か思いつく事ある?」
夕飯を食べながら“バラ”と言うテーマに悩んでいた僕は、苦し紛れに母に尋ねた。
そもそも我が家では、バラどころか花全般と縁のない生活をしており、過去にもらった花束も、『花瓶がない』と言う事で使い切った...

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8月期小題「向日葵/バチあたりの花」

「マキコ、あた、花は用意してあっとね?」
これから墓参りに行こうとする母に祖母が言った。
「わざわざ花はいらんでしょ。線香ば上ぐっだけでよかろもん」
普段は標準語なのに、帰郷したとたん母は思いっきり方言で喋った。私は思わずクスっと笑った。
「な~ん言いよんね。あたが盆に墓参りすっとは何十年ぶりて思と...

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7月期小題「蛍/おかえりなさい…」

「お母さん、蛍ってどうして光るの?」
僕は、浴衣姿の母の腰にしがみつきながら尋ねた。
「蛍はね、星になった人たちが戻って来た姿なの。だから星のように光っているの」
母が答える横で、僕は無数に飛び回る蛍を片手で捕まえようとした。すると、母はすぐに僕をたしなめ、両手でそっと蛍を捕まえて見せた。
「蛍はね...

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