【石物語】黒衣の魔術師 ①
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/07/30 01:51:47
どろどろどろどろ。 舞台のすぐ下で太鼓が鳴ります。 火薬が弾ける音とともに突然、舞台に黒い影が現れました。 きなくさい白煙と一緒に顕現したその者は両手を合わせ、客席に向かって深々と頭を下げます。 「みなさまに、太陽と月の恵みがありますように」 黒いターバン。黒服に黒マント。頭に...
どろどろどろどろ。 舞台のすぐ下で太鼓が鳴ります。 火薬が弾ける音とともに突然、舞台に黒い影が現れました。 きなくさい白煙と一緒に顕現したその者は両手を合わせ、客席に向かって深々と頭を下げます。 「みなさまに、太陽と月の恵みがありますように」 黒いターバン。黒服に黒マント。頭に...
ラピスラズリ・デュ・ヴレ・ヴィサージュ Lapis lazuli du vrai visage
(フランス語で真貌のラピスラズリ、愛称ラピス)
紺碧のラピスラズリ。黄鉄鉱の金色の条が走る。
自ら変容する力、あるべき姿と歓びの希求から組成される。
最初の所有者は半面に大きく傷を負ったフランスの宮廷奇...
ソムニウスはじっと扉を見つめた。 青白く光る扉。その向こうにいるものは、今まで再三気配を感じてきたものだ。 その子どものごとき声は、今なんと言ったのだろう?
「醜いだと? 赤い髪だから、醜い? ああ……ああ、そうか」
真紅の髪は、ほとんど藍色の髪の民のなかにあってはか...
地底湖跡に弟子の姿がなかったゆえ、事態はソムニウスが最も恐れる方向に転がった。 首のない骸が担架で守衛たちに運び去られたあと。顔面蒼白でわななく国主が見守る前で、中年と壮年の神官が現場に集まり、空洞のすみにあいている小さな穴を検分した。 その穴道には、血の跡があった。毛皮神官の首から滴...
月に水はない。 昔だれかが教えてくれた。 黒くたゆたって見えるところは、あれは水ではないと。 あの人は一体だれであったのか……。 それはずいぶん昔のことで、娘はその名を思い出せない。 膝の上に載せられていたから、何も知らない幼子のころのことだろう。...