銀の狐 金の蛇 16話 醜狐 (後編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/07/08 10:14:51
ソムニウスは弟子の姿を探して、ふわふわ礼拝堂に入った。 しめやかな音の塊がおのが周囲をくるくる回っている。数人の奉り人が祭壇の脇で、細い筒がつらなった楽器を奏でているのだ。 祭壇前の棺にひとりすがって嘆いているのは、若君の奥方にちがいない。 よく見てみれば祭壇にも棺にも、なんとも細かい彫刻が施され...
ソムニウスは弟子の姿を探して、ふわふわ礼拝堂に入った。 しめやかな音の塊がおのが周囲をくるくる回っている。数人の奉り人が祭壇の脇で、細い筒がつらなった楽器を奏でているのだ。 祭壇前の棺にひとりすがって嘆いているのは、若君の奥方にちがいない。 よく見てみれば祭壇にも棺にも、なんとも細かい彫刻が施され...
第二の犠牲者。レイレイの姉は、国主の実の娘。 わかった事実にソムニウスはなるほどと思った。 彼女が銀狐の毛皮をはおっていたのは、こういうわけだったのかと。
(つまり現国主とその子が、身分を示すためにはおるもの、というわけか。となると。あの赤毛の毛皮神官も国主の子か?)
さらにひそまる老人たちのひ...
遺書は、もう書いている。いつ死んでも大丈夫なように。もう何年も前から用意している。
(私はお師さまのようにひどい奴じゃない。我が子にして恋人たるあの子を決して悲しませたりしないぞ。お師さまに去られたチルと、同じ思いはさせない。絶対に独りにはせぬ)
赤い服を着た子は、ソムニウスの心の臓を奪った。...
岩窟の寺院での修行は実に厳しい。 蒼き衣の見習いが導師となるには、数多の試験をこなさねばならない。 十代でなれる者は皆無。二十代前半でなれれば天才とみなされる。 何十段階もある試験の最後には、ほとんどの者が一度ならず足踏みする最後の関門がある。
幽体離脱。
導師たちの間では離脱状態になることを...
当主さまは私の棺を荷台車に乗せて、王宮から逃げようとしたのです。 突然、当主さまをぶんぶん音を立てる蟲たちが追い立ててきたからです。一体どこから放たれたのか、鉄の殻をもつ蟲たちはとてもたくさんいて、当主さまを取り囲みました。 そうして一斉に歌い出したのですが。 羽音の歌に混じってはっきりと、固い声...