自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・96
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/10/19 11:27:47
「何っ!?」
バルドスが目を剥いた。ロランが止める前に、キラータイガーは1階の観客席へ飛び移り、逃げ遅れた人々を襲っていた。
「しまった!」
ランドが縁に身を乗り出しすぎ、落ちそうになって慌てて足をじたばたさせ、なんとか戻る。
「おい、なんで魔物が凶暴化した?!」
バルドスが訊くと、ランドは急...
日々感じたことを書いています。
なんとなく、徒然草。
「何っ!?」
バルドスが目を剥いた。ロランが止める前に、キラータイガーは1階の観客席へ飛び移り、逃げ遅れた人々を襲っていた。
「しまった!」
ランドが縁に身を乗り出しすぎ、落ちそうになって慌てて足をじたばたさせ、なんとか戻る。
「おい、なんで魔物が凶暴化した?!」
バルドスが訊くと、ランドは急...
ロランが試合場の中央に進み出ると、観衆はこの日一番の声を張り上げた。司会が告げたローレシアの王子の名に熱狂したのだ。
特に女性の黄色い声が目立つのは、ロランが王子であることと、美しく整った凛々しい顔や、均整の取れたたくましい体つきを持つゆえだ。
しかもロランは陽気ではない。戦いに臨む時、彼の目...
「えっ!」
ランドが愕然とした。
「回復もだめですか?」
「もちろんだ。以前、両者が回復魔法で粘りすぎて半日過ぎた試合もあったからな。制限時間をもうけているが、判定もつきにくいから禁止にしたのだ」
「そんなぁ……」
ロランの手助けをしてやりたいが、ランドはまだスクルト...
【惑いの月】
ロラン達が街門をくぐると、どっと歓声が押し寄せてきた。
「なんだろう?」
思わず立ち止まると、中年の衛兵が髭面を笑ませた。
「闘技大会さ。今は下弦の半月だからな。腕に覚えのあるやつらが、賞品目当てに勝ち上がり戦をやってるよ」
「賞品? どんな品ですか?」
ランドが尋ねると、衛兵...
「……」
洟をすする音がして、ロランはぼんやりとかたわらを見た。ランドが起き上がり、しきりにしゃくりあげている。反対側でも、ルナがローブの袖で顔を覆っていた。
「ふたりとも……夢を見たのか?」
「ロランも?」
泣きはらした目で、ルナが問い返...