9月自作(病気) 「出会いの日」1/2
- カテゴリ: 自作小説
- 2020/09/30 23:55:55
「エリク。エリクや」 白髪の三つ編み、白髭ぼうぼうの俺のお師匠さまが、黒き衣の袖をひらひらさせて手招きする。 目が二つの山になってて、口はゆるやかな谷。 「あー、お帰りなさい、お師匠さま」 警戒しながら俺は頭を下げた。 ……やばい。 この表情...
「エリク。エリクや」 白髪の三つ編み、白髭ぼうぼうの俺のお師匠さまが、黒き衣の袖をひらひらさせて手招きする。 目が二つの山になってて、口はゆるやかな谷。 「あー、お帰りなさい、お師匠さま」 警戒しながら俺は頭を下げた。 ……やばい。 この表情...
シノブの両親はこの世にいない。母はシノブが生まれてすぐに亡くなり、父は小学生のころ、海外へ仕事に行って事故で死んだ。 母は家に籍を入れる前に鬼籍に入ってしまったので、この家の、「お盆に帰ってくるシステム」に加わることができなかった。それでもたまに、ふらっと会いに来てくれる。しかし父親はついぞ、やっ...
今宵の空は晴れやかで、白鳥の十字星がはっきり見えた。 それでも、空気中の塵は少なくないのだろう。白鳥が遡上している天の河は、輪郭すらおぼろげで、織姫と彦星をへだてているものは何もないようだ。 縁側で足をぶらぶらさせるシノブは、空から手元のスマートフォンに目を移した。 幼なじみのタクミからライン...
庭にしとしと、雨が降っておりますんで、本日、舞のお稽古は延期です。 うちがそう申し上げますと、姫さまは、ぶっくりふくれっ面にならはりました。 姫さまは来週、弘徽殿の御方にお呼ばれしておりまして、そこで舞を披露したいと、ありていにいえば、弘徽殿の御方に見せつけたいと、思し召してはったから...
それからぶつぶつと文句を垂れ流しつつ、うちは仕方なく、姫さまの御家が抱えてはる絵師の中で、一番の腕を持ってはる御方に白羽の矢を立てました。 それは賀茂という名の方で、姫さまの父君のためにしばしば、いとうるわしい天体の図などを、色鮮やかに描いてはるのです。 事情を話しますと、賀茂さまはニ...