Nicotto Town



思ったこと、感じたことの日記

4月期小題「はじまり/復活」

ワールドエースは、最終コーナーを3番手で回ると目の前に広がる緑の絨毯を力強く駆け上がった。
一瞬、エースの右目の端にそれまで先頭争いをしていた2頭の姿が映った。だが、エースがそれまでの鬱憤を晴らすかのように大きく四肢を伸ばすとあっという間に視界から消えていった。
それでも初めてエースの手綱を取ったジ...

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3月期小題「雪解け/夫婦喧嘩」

「すまん。金は、貸した」
お早は、徳利の首をつまんだまま固まった。
「何度目ね。もう、知らん!」
笑顔の消えたお早は、奥の部屋で布団を被ってふて寝してしまった。今日は、網元に納めた魚の代金をもらってくる日だったのだ。これで辰之助の今夜の寝床は囲炉裏端に決定した。囲炉裏に掛けられた鍋からは好い香りが漂...

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1月期小題「馬/待っとれよ!」

大歓声に包まれたオルフェは、ただ夢中でゴールを目指した。
後続の馬たちは、オルフェの本気の走りについていけずにどんどん離されて行くばかりである。
今のオルフェにとって、背中の騎手など単なる60kg足らずの重石でしかなく、無人の野を行くオルフェの姿は、誰の目にもこれがラストランであるとは思えず、まさし...

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12月期小題「雑踏/背中」

 今日が大晦日という丑の刻、米問屋が火元となった火事は、隣家と裏長屋を焼いたものの未明には鎮火された。
 深夜の火事にも関わらず小火で済んだのは、風が無かったことも幸いしたが、何より、先年に整えられた町火消しと住民たちの素早い対応のお陰だった。
 それでも、延焼を防ぐために潰された家が焼けた家の倍も...

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11月期小題「紅葉/紅い空」

時折冷たい風が吹きつける晩秋の日。眩しい陽光が雲一つない空を薄青色に照らす八つ時であった。
大銀杏から降りそそぐ落葉は、寂びれた社と閑散な境内を黄一色に染めている。
乾新十郎は、立ち上がって鞘を払うと白装束姿の榊小太郎と美祢に対峙した。
新十郎は、たしかに師である義父を殺めた。それが仇討ちの理由であ...

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