銀の狐 金の蛇4 「冬毛」(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2016/12/23 18:56:01
絶世の美女の、切ない懇願。 潤む瞳。ほのかに下がる秀眉。震える薔薇色の唇。
『お願い……』
この貌(かお)にほだされない者など、この世にあろうか?
「いや、ないな。絶対ない……」
「ソム! 駅馬を借りましたよ。屋台でお弁当も!」
輝く...
絶世の美女の、切ない懇願。 潤む瞳。ほのかに下がる秀眉。震える薔薇色の唇。
『お願い……』
この貌(かお)にほだされない者など、この世にあろうか?
「いや、ないな。絶対ない……」
「ソム! 駅馬を借りましたよ。屋台でお弁当も!」
輝く...
湖の向こう岸にあるのは、果て町という小さな町だ。
その名の通り、大陸最北端の居住地とみなされており、大陸東部を南北に縦断する大街道の終着点。もしくは、出発点となるところである。
――「どういうことだっ!」
船から降りるなり、師は果て町の船着場で待っていた一番弟子に走り寄って問いただし...
夢見の結果がいつ実現するか。
いまだかつてソムニウスは、正確に当てたためしがない。
それが成就する瞬間まですっかり忘れていて、あっ、と思い出すことが大半だ。
しかしあの時の明け方の夢は珍しくも、そして幸いにも、現実となる前に脳裏によみがえった。
と言っても思い出したのは、ひと月も後のこと。...
その日。わしの家の郵便受けに、北の果ての果てのお屋敷からの手紙が入っておった。 雪の結晶で封印されていたから、ひと目でそこから投函されたんだとわかったよ。 手紙を開いたら、真っ白な結晶が一瞬あたり一面にいくつも飛び広がって、輝きながら消えていった。 ふわふわ浮いて透けとる氷色の紙をいろどってい...
「……!」
ぴんときて、弟子が飛びつくようにして指示されたところを開ける。
とたんに淡い色の眼が輝いて、顔にぱぁっと薔薇色の紅潮が走った。
「ソム! これ……アマルサの顔料?」
「そなたのものだ。使いなさい」
弟子はうっとりと、紅...