8月自作 海 「大海嘯」(前)
- カテゴリ: 自作小説
- 2016/08/31 22:47:30
ちりんちりんと、塔の窓からぶら下がっている風鈴が鳴っている。
真っ赤な金魚の形をしていて、ギヤマン製のおっきい目玉と半分開いた口が、どこかユーモラス。
世間一般は、夏。
入道雲がもくもく空に浮かぶ夏。
ということで、
「海! 海に行くぞぉ!」
と、俺の雇い主であるウサギ技師は、自走す...
ちりんちりんと、塔の窓からぶら下がっている風鈴が鳴っている。
真っ赤な金魚の形をしていて、ギヤマン製のおっきい目玉と半分開いた口が、どこかユーモラス。
世間一般は、夏。
入道雲がもくもく空に浮かぶ夏。
ということで、
「海! 海に行くぞぉ!」
と、俺の雇い主であるウサギ技師は、自走す...
名乗らないエラそうな銀髪少年は、薄くて綺麗な模様が織り込まれたひらひらの衣一枚、といういでたち。端末フォンのようなものは、何も持ってない。 三日前に拾った時は、背中が焼けてて結構な重症で。 傷を見たじっちゃん曰く(えらく悲愴な顔で)、『翼をもがれた鳥のようじゃなぁ』 つまり体内に機霊が埋まってるら...
『うっしゃあ! メイ姉さーん、メケメケの修理終わりましたぁーっ』 おっきなトラック型の反重力推進機(メケメケ)の前で、ぴしっと敬礼する俺に。 おっきなお胸のメガネのおねいさんが、長いみどりの黒髪をなびかせて、嬉しげに微笑む。『わああ、ありがとうテルちゃん!』『どうですぅー? ついでにてきとーに、潜...
「今日は一段と、まぶしいわねえ」 プジが東の空を眺めて眉をひそめる。 サファイアの猫眼がせわしなくしゅんしゅん言ってるから、拡大視でもしてるんだろうか。 俺たちは風化遺跡から、真っ赤でじゅくじゅくな大地に敷かれた舗装路を、ひたすらまっすぐ南下した。 三十分もすると、空はだいぶ暗くなり。真正面に真っ黒...
「テルぅー。もう帰りましょーよー」 ぱしん、ぱしん。 先っぽが銀色金属丸出しのふさふさしっぽを地に叩きながら、プジが俺にぶうたれる。 両手両足をそろえ、ちょこんと正座している殊勝な格好だが、猫ってやつは尻尾だけは嘘をつけないようだ。「おじいさまが心配してるわよー」 腕に嵌めてる端末(フォン)を見た...