「百の庭園」 序歌 イオニマスの虹 2/3
- カテゴリ: 自作小説
- 2019/06/24 23:24:13
少年が鏡に叩きつけるように腕を振ったので、フクロウは一瞬べちゃりと鏡面に落ちた。しかしすぐに翼をしまい、すまし顔で少年を見上げる。 「庭園の主と我が名にかけまして、このような無体は看過できません。今すぐわたくしに、ごめんなさいとお言いなさい。悔い改めるのです」 「ふん、言うものか。おま...
少年が鏡に叩きつけるように腕を振ったので、フクロウは一瞬べちゃりと鏡面に落ちた。しかしすぐに翼をしまい、すまし顔で少年を見上げる。 「庭園の主と我が名にかけまして、このような無体は看過できません。今すぐわたくしに、ごめんなさいとお言いなさい。悔い改めるのです」 「ふん、言うものか。おま...
黄昏の乙女の園は西の果てにありて 大地支える神を見下ろす楽園なり。
序歌 イオニマスの虹 燃えさかる名を持つ者よ。 声高らかに開闢を唄え。 今はもうどこにも居ない、あの人のために。 黄昏の光が、灰色の衣をまとう少年の手のひら...
師に事情を話してから一週間後、エルクは師から眼鏡をもらった。 鍛冶工房にいる黒き衣のゼクシスに、特注で作ってもらったものだ。 近視になったからだとラデルには説明したけれど、ギヤマンのレンズには特殊な膜が貼られている。 (幽霊だけ見えなくなるなんて、すごい!) 眼鏡をはずすと、回...
(はじめはぼんやり、影のようなものが見えるだけだった)(でも何日かしたらくっきりはっきりしてきて)(あっちにもこっちにも、うじゃうじゃいる……)(ほら、こっちをにらんでる) エルクが必死に頼んだので、師は口を閉じてくれた。 ラデルに講義で使う巻物を探すよう命じた師は、...
朝餉を食べ終えたあと、ラデルはエルクを図書室にいざなった。 二階にある図書室は、岩穴がいくつもつながっている構造で、とても広い。 壁は一面、岩をくりぬいた本棚だ。木製の書棚も、森のようにうっそうと、何列もそびえている。 書物が痛むのを防ぐため、窓はひとつも作られていないが、室内はとて...