アスパシオンの弟子69 父の願い(後編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/11/01 14:34:40
怒りに任せて、白い衣の胸倉をつかんだ――はずだった。 だが俺の手は、空を切った。涙で奴の姿がぼやけていたが、まっ白な衣を掴み損ねるなんて。相手は実体ではないのだろうか。「なんでこんなひどいことをする?! わざと人間の餌食にするなんて!」「人間を滅ぼすためです。それしか理由はありません」 冷酷な声...
怒りに任せて、白い衣の胸倉をつかんだ――はずだった。 だが俺の手は、空を切った。涙で奴の姿がぼやけていたが、まっ白な衣を掴み損ねるなんて。相手は実体ではないのだろうか。「なんでこんなひどいことをする?! わざと人間の餌食にするなんて!」「人間を滅ぼすためです。それしか理由はありません」 冷酷な声...
灯台もと暗しというやつだった。 魔法の糸の行きつく先にノミオスはいた。王都の王宮近くの、森に囲まれた広場に。 宵の口だったが、広場にはかなりの人だかりができていた。 その群がりを遠目から見たとたん、嫌な予感がよぎった。 ポチを木陰に降ろさせていつもの蒸気車の形にする。それから俺たちは急いで...
『破壊。破壊。破壊せよ!!』 痛い……。 『滅ぼせ!!』 痛い……! 焼け付くような痛みが脳髄を襲ってくる。頭の中をずたずたに食いちぎってくるような、すさまじい苦痛が。 脳の中でズキズキガンガン暴れまわる恐ろしい叫び。内側から鼓膜が...
青年は一瞬わが耳を疑った。「食べる? あれを?」『許可してくだされば、食べて消化いたします。英国紳士は、好き嫌いをいたしません』 「ま、まあいい、なんでもいいから怨念たちを退治してくれっ!」『了解しました。それでは。いっただーきまーす!』 青年の命令にとても嬉しそうに答えた剣の柄が、燦然と輝いたと...
こんな夜遅くに使者? 何だろう、この嫌な予感は。 青年は黄金の狼を子供の部屋に置いて守らせ、自身は厨房に走って樽から折れた剣を外し取った。 『盾を着けなさい、我が主。先日手に入れた古代兵士の盾を』 剣はさっそく頼もしい助言をしてきた。 『異様な波動を感じます。ご注意を』 副団長は腹心の騎...