アスパシオンの弟子57 ツルギ島(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/08/07 20:10:28
ふしゅうと噴き出す蒸気。ガラガラ回る歯車。リンゴロンと鳴り響く、時を知らせる鐘の音――。 「おじいちゃん」と赤毛人たちが住む塔は、表面はびっしり木や草に覆われているのですが、内部はとても機械的な音に満ちていました。そこかしこ、金属の壁や管や歯車だらけです。 しかし上の方の階には、赤毛人たち...
ふしゅうと噴き出す蒸気。ガラガラ回る歯車。リンゴロンと鳴り響く、時を知らせる鐘の音――。 「おじいちゃん」と赤毛人たちが住む塔は、表面はびっしり木や草に覆われているのですが、内部はとても機械的な音に満ちていました。そこかしこ、金属の壁や管や歯車だらけです。 しかし上の方の階には、赤毛人たち...
びゅんびゅん風切る獅子に乗る双子の姉妹。と、尻尾にしがみつく僕。 蒼かった空がほのかに橙色に染まるぐらい、獅子は木々の間をかけ続けました。恐ろしく速いので、相当な距離を走ったでしょう。 鉄の獅子の尻尾の先は鋭い棘になので、彼女達の根城に着くまでに僕はあちこち血まみれ。って、その前からかなり血...
表紙が取れかけた革の本。その著者が、「アスパシオンの弟子」? 基本、導師の名前にひとつとて同じものは存在しないはず。 導師の名前は俗世間では使われることのない神聖語で、最長老によって慎重に名づけられるものです。 同じ名前を使う時は師の名を継ぐことが多く、二世、三世とあとに付けら...
かくしてどろどろの塩漬け魚にまみれた青年は、折れた剣を抱いて野営地から逃げ出した。 とにかく臭いので、敵兵たちはみな臭素爆弾だと思い込んで怯み、すっかり逃げ腰。その隙をついて味方の兵士たちは森の中へ。いや、味方もあまりの臭さにほうほうの体で逃げ出したのだった。 青年自身もひいひい言いなが...
翌日。天の機嫌は悪くなり、夕刻まで豪雨が降り続いた。 街道をわざと避けて行軍していた軍は、たちまち速度を奪われた。草地は豪雨でぬかるみ、泥炭層の土は荷車の足を呑みこんだゆえに。 軍隊は日没までには丈高く防壁を築いた砦に入れるはずだったが、道程の半分ほどしか進めなかった。 司令官は仕方な...