アスパシオンの弟子41 祈願玉 (前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2015/04/18 11:02:02
メニスの繭が誰かに割られた? 結界を張っていたのに?「そんなこと、ありえない!」 思わず叫んだ僕でしたが。セバスちゃんによると、僕の風送り隊二人は侵入者に韻律で攻撃され、命からがら温室の前で狼煙のような非常用の信号弾を打ち上げたそうです。 「繭に駆けつける兵士たちの気配を察して、敵は逃...
メニスの繭が誰かに割られた? 結界を張っていたのに?「そんなこと、ありえない!」 思わず叫んだ僕でしたが。セバスちゃんによると、僕の風送り隊二人は侵入者に韻律で攻撃され、命からがら温室の前で狼煙のような非常用の信号弾を打ち上げたそうです。 「繭に駆けつける兵士たちの気配を察して、敵は逃...
トルナート陛下が連日がむしゃらに働く理由を知り、僕の胸はひどく痛みました。 想像を絶する哀しみと過酷な経験。陛下がご自分のことを朕ではなく僕と称する理由が、なんとなく解るような気がしました。 「桃を見ると思い出す。サクラコさんと初めて会った時のことを。かぐわしい桃がたくさん植わってる、とあ...
「お師匠さま、交代です」――「んがっ」 メニスの繭の見張りを始めて三日目。 僕は妃殿下の温室で、いびきをかいて長椅子にでんと寝ている我が師を揺り起こしました。 この温室の中は外に比べて大変涼しいです。ギヤマン張りの壁は特殊な膜が貼られていて、南国の強烈な日光を遮るようになっているからです。 ...
僕の全身が、ざわっと震えました。 「やっぱり、そうなんだ? フィリアは僕に、また甘露をくれたんだ? メニスの血を……」 「うん。自分が治してやるんだって、手首切って、瀕死のウサギに血をぶっかけてたわ」 後ろからついてきた兄弟子様が、ぼふっと僕の頭に手を載せました...
まっ暗闇の中に落ちた僕は……誰かの呼び声で目覚めました。 『ぺぺ! ぺぺ!』 黒髪の男の子がびいびい泣いています。 ウサギの僕をぎゅうっと抱っこして、すりつぶしたニンジンをむりやり食べさせようとしています。 『ぺぺ。しっかりしろ! ぺぺ! これを食べろ! ...