アスパシオンの弟子29 常若玉(後編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2014/12/12 16:21:08
僕の肌はざわつき、粟立ちました。 灰色の導師の胸には深く白い手が埋まっているのに、一滴の血も流れてこないのです。 美しい人の銀の髪がざわりと揺れ。一瞬、紫紺の瞳に苦痛が浮かぶや、胸に埋まった手がするりと出されました。その手の上には、丸い小さな珠が乗っていました。 真珠のように光沢のある...
僕の肌はざわつき、粟立ちました。 灰色の導師の胸には深く白い手が埋まっているのに、一滴の血も流れてこないのです。 美しい人の銀の髪がざわりと揺れ。一瞬、紫紺の瞳に苦痛が浮かぶや、胸に埋まった手がするりと出されました。その手の上には、丸い小さな珠が乗っていました。 真珠のように光沢のある...
「なれます。あなたの奴隷に」 迷うことなく僕が答えたとたん。 銀の髪の人はまるであざけるように声をあげて笑いました。 「そんなに簡単にうなずいてしまっていいのか? 奴隷の意味も解らずに?」 「たとえ手足をよこせといわれても、生贄になれといわれても、」 僕はきっぱり答えま...
翌日僕はフィリアの寝台を解体して、導師がくれた図面とにらめっこしながら再修理に挑みました。 大工道具を使うのもなんとか慣れてきて。 「いびつだけど、足の高さは揃ってるわね」 その日の夕刻にはフィリアが渋々納得してくれる出来栄えになりました。 しかし兄弟子さまは相変わらず工房に入り浸り。...
青く澄み渡る快晴の空と白い木立が広がる雪景色の森。 幹が半分吹き飛んだ巨木の洞からきらめく冬景色が見えています。 洞の中では少女の声が響いています。 「そこ! 曲がってるわよ」 「はい!」 「もっと右」 「はい!」 「そこでとめて」 「はいっ!」 僕は今、懸命にトンカチを叩い...
「鳥たちがあわてて報せに来た。我が家が破壊されているとはどういうことだ? おまえたちは何者だ?」 灰色の衣をまとった人――メニスの少女の母親は、僕らの前に仁王立ちになって問うてきました。 目を見張るほどとても美しい女性です。 まだ二十代半ばかそれぐらいの若い人にしか見えません。 まっ白な肌は...