アスパシオンの弟子⑯ 銀の鳥かご 前編
- カテゴリ: 自作小説
- 2014/08/19 16:46:47
寺院の三階の、ひんやり薄暗い岩壁の部屋。 岩をくりぬいた小さな円い窓が三つ、並んでいます。 昼下がりの日の光が差し込むその窓から、歌声が流れ込んできます。 唱和です。 黒き衣の導師様たちが、岩の舞台で鎮魂の歌を歌っておられます。 向こう岸の街の犠牲者を、悼んでいるのです。 街の被害は、甚大でした。...
寺院の三階の、ひんやり薄暗い岩壁の部屋。 岩をくりぬいた小さな円い窓が三つ、並んでいます。 昼下がりの日の光が差し込むその窓から、歌声が流れ込んできます。 唱和です。 黒き衣の導師様たちが、岩の舞台で鎮魂の歌を歌っておられます。 向こう岸の街の犠牲者を、悼んでいるのです。 街の被害は、甚大でした。...
寺院の中庭に照りつける太陽の光。 おいらの家来が、畑仕事をサボって手ぬぐいを頭からかぶって座り込んでる。おいらの隣にべったりと。 「あついってハヤト」 「うん。暑い」 「だるいってばハヤト」 「うん。だるい」 「おまえ、ちょっと、はなれろよ」 「え。なんで」 「べたべた暑苦しいんだ...
ざあざあ雨降る梅雨の火曜日。沙樹は学校帰りに、週一のピアノレッスンへ行った。女子高からピアノ教室まではバスで二十分。学校前のバス停から乗っていく。 バスに揺られる間、雨はどんどん激しくなってきて。車窓に幾本も斜めの筋をつけた。 教室は先生の個人宅だ。古い住宅街の瀟洒な洋風の家で、バス通りに面している...
天を突くかとみまがう石の城壁の外側に、天幕がおびただしく並んでいる。 なだらかな丘陵にすし詰めに張られ、あたかも白波のよう。 その波は、いまにも打ち寄せ城壁に迫らんばかり。「四方を囲まれたか」 革鎧の兵士は、城壁の内側、見張りの塔から天幕の海を眺めるや。螺旋の石段を降り、石畳の狭い道をすり抜け、...
光あれ。 確かこの世界の始まりの言葉は、そんなだったと思う。 本当かな。 でもたぶん、この世界の終わりの言葉は、耳にしたと思う。 それは、たった今のこと。 『光よ、去れ』 ぶ厚いアクリルの船窓におでこを押しつけて、蒼い蒼いきれいな星を眺めて...