Nicotto Town



夢の国(後編)

トイレから帰る途中にワゴンでマンゴーアイスを買った。列に戻り、女性にお礼を伝えて、アイスをどうぞと渡した。女性がアイスを食べる間、日傘を預かり差してあげた。

食べ終わったゴミをもらって、列の脇に置かれていたゴミ箱に入れた。これをきっかけに、女性に話しかければよかったけど、いいおっさんなので、勇気がなかった。若い頃にも、女性に声をかけたことはなかった。

ようやく、ソアリンのファストパスの入り口にたどり着いた。キャストの人に、あと、どれくらいですかと聞くと、1時間くらいですと言われた。時々、建物の中や空調施設から涼しい風がそよいでくるようになった。

すると、隣に並んでいた女性から声をかけられた。
「険しい顔をされていますが、体調が悪くなられたのですか?」
「少し、考え事をしていただけです。」
女性が不安そうな顔つきになっている。

確かに考え事をしていた。4時間並んでいる間、不思議に思っていたことがあった。どうして、日本の女性の胸は小さいのかということだった。行列には海外からの人も多く並んでいたが、白人もラテン系も東南アジアの女性も皆、胸が大きい。ブラジル人のお母さんは、メロンのようなおっぱいだ。

孔雀も世界一美しい鳥と言われるケツァールもメスに気に入られるために大きな尾羽を持っている。生存競争に打ち勝つためには、大きく美しい羽が必要だったのだろう。

おっぱいから想像するのはふたこぶラクダだが、そのコブには、長旅に耐えられるように脂肪が詰まっている。やはり、大きい方が生存競争に有利だ。

日本人男性は、小さな胸が好みだと思わないとダーウィンの進化論と矛盾する。確かに、日本文化はもののあはれをよしとし、はかなきもの、弱きもの、ちいさきものに愛情を感じる。

海外の女性と日本女性の服装の好みの違いも顕著だ。海外の人は、身体のラインの出るピッチピチのTシャツを着ている。お腹に肉がついていてもおかまいなしだ。その点、日本の女性は、ゆったりとしたTシャツや清楚で品のある服装が多い。

でも、日本人男性が微乳好きだとすると、自分はどうして巨乳好きなのだろう。ひょっとして、少数派なのだろうかと考えていた。そんなことを考えていたなんて、清楚なノースリープのワンピースながらも胸が大きいことが分かってしまう彼女に伝えることはできない。

「最近の米中の経済摩擦について、考えていました。妥協点が見出しにくいですね。」
「貿易関係のお仕事をされているんですか?」
「いえ、家電のメーカーに勤めています。扶桑電気です。」

彼女は、バックの中から、名刺を取り出すと、両手に持ち替えて渡された。
「私も、扶桑電気です。」
「横浜の開発研究部にお勤めなんですね。」

自分も財布の中に入れてあった、名刺を彼女に渡した。
「え~本社のコンプラインス室の室長さんなのですね。どこかで、お見かけした気がしていたんです。セクハラ研修の時の講師をされていませんでしたか。」
「春に講師で、横浜に伺いました。いつまでたってもセクハラがなくなりません。男性社員の意識改革が必要です。」

「そうですね。若い社員はそんなことはないですが、中年の男性は、いやらしい眼で見ていると感じることが、たまにあります。」
「そうですか....」

話題を至急変更し、ディズニーによく来ているんですかとか聞いた。女性の年齢は分かりにくいが、彼女、涼宮はるひさんは、40歳前後だろう。年間パスポートを買って、よく来ているとのことだった。暑さの盛りだけど、ソアリンを早く体験したかったと言っていた。

ようやく、建物の中に入った。ホーンテッドマンションのように、前室に入って説明を受ける。壁にかかる絵画があっとおどろく仕掛けだ。扉が開き、ブランコのように天井からぶら下がった10人がけの椅子に座る。

360度の映像に囲まれる。Zガンダムのコクピットにいるような気分だ。ふわっと浮き上がり、すごいスピードで雲の中を進んだり、サバンナを走る動物たちと競走したり、鳥になり世界中を旅している気分だ。夜空に輝く東京タワーを見た時には、感動すら覚える。10分足らずの短い時間だけど、5時間並んで良かったと思えた。

彼女はファストパスを取っているセンター・オブ・ジ・アースに行くと言って、ソアリンを出たところで別れた。マーメイドラグーンでアリエルのショーを見終えると、空調の効いているところから出たくなくて、しばらく、トリンズキングダムのベンチに座っていた。

周りを見渡すと、疲れたお父さん達ばかりだ。ガイドマップを床にひいて、座り込んでいるお父さんもいる。歩いている女子高生が、「ホームレスみたいだね。」と言っていた。その通りだと思ったので、マーメイドラグーンを後にした。

アメリカンウォーターフロントまで、てくてく歩き、お昼ごはんを食べていなかったので、ビールと骨付きソーセージを買って、ベンチに座って食べた。まだ、3時だ。何をしようかなと考えていたら、涼宮さんが通りがかった。

「室長、何をされているんですか。」
「次、どこに行こうか考えていました。」
「それなら、ベネチアンゴンドラに乗りませんか。すぐ、近くです。」

それから、彼女と一緒に行動した。彼女に案内されるままだが、彼女は大好きなディズニーランドについて語るのが楽しそうだった。
「ランドは、最後に打上花火があるんですけど、シーにはないんです。どうしてだと思いますか?」
「火山があるから、花火はいらないのかな。」
「はずれです。シーは住宅地に近いので、花火が打ち上げられないんです。ちょっと、現実的ですね。」

ソアリンの行列を待つ時間は長く感じたが、彼女と一緒にいる時間は、あっという間に過ぎ、閉園時間になった。僕は、勇気を奮って、彼女に「これから、お酒でも飲みにいきませんか。」と誘った。

彼女は、バックの中からスマホを取り出すと、ホームボタンを押した。画面が明るくなり、待ち受け画面には、彼女と肩を組んだ男性の写真が写っていた。
「旦那です。」

「今日は、ありがとうございました。」
そう言って、彼女と別れ、今日、一日我慢をしていた煙草を吸いに、喫煙ルームに向かって歩いた。シンデレラ城を照らしていた照明も暗くなった。24時より少し早く、魔法が解けた。

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2019/08/20 22:19
環謝さん
USJ報告を待ってます。宝塚ファミリーランドでも、岡田君のヒラパでのいいです。

ゆりかちゃん
小笠原長時、享年70歳。当時の70歳は仙人のような存在ではないでしょうか。にもかかわらずセクハラをしたとなると、相当元気なおじいちゃんでしょう。伊奈を追われ、三好、上杉、蘆名への元へと放浪しながらもお家最高を目指す。じっちゃんにってもセクハラするくらい元気なところは見習わないといけません。山城にはアイスを売っていないですが、躑躅が崎館の大手門前のお店には信玄アイスを売っていました。

あずささん
名刺を片手で渡すことはありません。名刺入れの上に乗せる場合や載せない場合もありますが、両手で持ち渡します。主人公は社員割引でエアコンをつけているのではないでしょうか。喫煙者は絶滅危惧種になって、肩身の狭い思いをしています。

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2019/08/20 20:24
うへぇ~なんか出木杉くんのストーリーだにゃ(=^・^=)
名刺や物の差し出し方は勉強になりました
両手で丁寧に渡したいですね
電気屋さんなのに冷房つけないんですか?
喫煙者かぁ。。。マンゴーアイスの甘さより
タバコの臭いが届いちゃいました(>_<)
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2019/08/20 12:29
こんにちは、沖人さん。

わぁ^^御礼にアイスを差し上げるなんて、室長さんは素敵な紳士ですね。
…と思ったら、険しい顔して何を考えているのですか~??;;
それは、頭の中だけに留めておいて正解……でも笑いました♪

沖人さんがお調べになっていた 小笠原長時も、
家臣の妻にセクハラして、残念な最期を遂げたのでご注意ください。
あ、でも以前にセクハラ講習に参加されていた日記があったと思うので、沖人さんは大丈夫ですね(*^-^)

最後のオチが…まさかの既婚者でしたか。
せっかく勇気を出したのに残念。

ずっと解けない魔法を目指して、次回も頑張ってくださいね^^
私も炎天下の犬山城で、行列に並ぶのが億劫になり入城を諦めてしまいましたが、
素敵な殿方からアイスが貰えることを期待して、来年は頑張ろうと思いましたv
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2019/08/20 00:53
(*_*、)ヾ(-ω- ) ヨシヨシ
どんまい 沖人さんw
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2019/08/19 21:58
みゅうさん
大人には、ランドよりシーの方が楽しいです。旦那さんとペアルックで歩いても違和感なく異国の景色に溶け込むでしょう。ベネチアやスペインのような地中海周辺を歩いている気分になれます。自然と旦那さんと手をつないでいるはずです。

clefさん
ゴンドラは、チャオとアリベデルチが合言葉ですね。ゴンドラは通りませんがリアルト橋を再現していたり、街並みもよくできていて、ベネチアでゴンドラに乗っているのと比べても遜色がありません。船頭さんは、シーの方が親切ですね。今は、ランドで拡張工事中です。アナ雪の世界だったかな。
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2019/08/19 21:50
さなちゃん
花火は綺麗でしたでしょうか。東京の花火大会はほぼ終了です。八丈島の納涼花火大会に行きたかったですね。次の東京勤務の際は、お盆は八丈島で過ごすことにします。

リンゴさん
年間パスポートを持っているので、奥さんは、毎月ディズニーランドに行っていると思います。季節のいい時は一緒に楽しんでいる旦那さんも、「あなた、一緒に行く?」と誘われたとき、「このクソ暑いのに、熱中症になりにいくようなもんや。留守番しとるわ。」と言ったに違いありません。

環謝さん
同僚に報告したくても、落ち込んでいたと思います。夢から覚めて、舞浜から東京駅までの夜にも関わらず満員電車の中で疲れ果てていたのでしょう。終電間近なので、寄り道もできず、寂しく帰ったのでしょう。

たまちゃん
この時期、空いているのは海底2万マイルくらいしかありません。後は、ちびっ子用のフライングフィッシュコースターやアラビアンコースとのメリーゴランドくらいです。ここは、5時間並びましょう。終戦直後の買い出しの苦労やオイルショック後のトイレットペーパーの行列に想いを馳せることができます。

みーぴこさん
悲しんではいけません。振られるからこそ、続編が生まれるのです。寅さんが光本幸子(第1作マドンナ)と恋愛が成就していたら、国民映画にならなかったでしょう。ちなみに、第1作のマドンナは、御前様の娘さんで、舞台は奈良です。

Cherryさん
初対面の旦那さんに「奥さん、美人ですね~」とか「奥さん、スタイルいいですね~」と言ったら、殴られる可能性があります。キャバクラに行った方が楽しいでしょう。そして、少なくなった財布の中を見て、夢から覚めて落ち込むのです。

蓮さん
そう、悲しい結果になる可能性があるから、小心者の男性は声をかけることができないのでしょう。だけど、半日、楽しい夢を見ることができたので、罰ゲームもいい思い出になったと思います。

オレンジ先生
シーに行くならば、ソアリンです。5時間並ぶのは大変ですので、ファストパスを取りましょう。開園1時間前(午前7時)に並ぶ。事前に公式アプリをダウンロードしておき、入場した直後にアプリからファストパスを取得する。早起き頑張りましょう。

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2019/08/19 14:36
この終わり方、何となく予想がついていたけど、今回は?と思っていました(笑)

でも、ゴンドラ、彼女と二人で楽しかったと思います、私独りで乗ったけど楽しかったのでw
拝読していたら数年前のシーの光景が段々蘇ってきました、次はやっぱりフロリダに行きたいなぁ(笑)
ソアリンはもし行くとしても暫く行かないですね、激混みだし。。。もう一つ位新しいものが
増えたらその時考えるかもですw

因みに、私胸は大きめですけどノースリーブは着ません、腕が太いので(V)o¥o(V)
巨乳の人は私の様に太ってる人も多いのでお間違えの無いように(笑)
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2019/08/19 09:30
シーには行っていないので増々興味深々是非出かけてみたいです
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2019/08/18 23:30
そうですよねぇ・・
ダンナさんいますよねぇ・・・残念。
ソアリン乗ってみたいけど
今はすっごい並びますものね。
何年か待とうかしら・・^^
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2019/08/18 22:13
頑張って誘ってみたのに、
あらら・・・なラストですね。
まさに夢の国でしたね。
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2019/08/18 21:46
楽しい、1日過ごせてよかったですね。
これ実話?
妙に実話っぽい設定ですね。

せっかくだから旦那も誘って飲みに行けばよかったのに。
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2019/08/18 20:11
そんなぁ~・・・・
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2019/08/18 19:45
あ~最後は沖人さんらしい終わり方だ~~~^^
でもこういう結末、癖になりそうですw
それにしても、5時間待ち・・・想像すらできません。
そのくらい並ぶ人もいるんでしょうけど、
私は貧乏性なので、数をこなすべく、空いているところばっかり行ってしまいそう(笑)
実際におじさんの一人ディズニー、意外と多そうですよね。
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2019/08/18 19:26
同じ会社の人だと分かったのに、お酒を飲みに行こうと誘うなんて、沖人さんのお話の主人公にしては勇気ある〜〜って思ったけど、あらら…なラストになっちゃいましたね( ̄▽ ̄;)
途中からは、同僚に報告しなくて良かったのかな??
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2019/08/18 19:20
スマートでファンタジーな終わり方ですね。魔法が解けなかったらよかったのに。
スマホを見て現実に戻る感じが現代的です。
何故旦那さんと来ないのかしら^^;
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2019/08/18 19:15
途中まで読んだんですけどねー
帰って忘れなかったら続きを読みますww
これから花火見ますよー
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