Nicotto Town



追悼 井上尭之


元スパイダース、テレビドラマの音楽を数多く手がけ、
大病の後に復活、弾き語りでも活躍していた井上尭之氏が逝去。
以下、いつも通りにコアなギターマニア向けの追悼となりますです。

PYG、井上バンド、テレビの仕事、どれを聴いても井上さんの音は立っている。
エレキってたかが電気ギターなんですけど、やはり『楽器』なんです。
何使っても井上さんの音は、井上トーンと言うべき響きを帯びてます。

私は井上さんがギブソンの不人気機種、L-6Sを使ってる姿が大好きだった。
ギブソンも破産申請した。ギター売上の低迷も叫ばれて久しい。
そりゃそうです、ギターが一種の『銃』だった時代は既に終わってるんだしね。

ロカビリーからGS、ニューロック、テレビや映画音楽と活動を移したが、
井上さんはかなり若い頃「自分の音楽を演るのは諦めた」と言ってます。
ここが凄い。職業音楽家としての壮絶な覚悟だったと思う。

井上さんの凄さを知りたいならまずは『I stand alone』が宜しい。
『傷だらけの天使』最終回のエンディングで使われた、デイブ平尾の名曲。
この音色は沢田研二の『時の過ぎゆくままに』と共通しているのも分かる。

角川映画の『戦国自衛隊』で流れる『Endless way』もよい。
当時リアルタイムで聴いて、不遜にも「ツマンネエ仕事してんな」と思った。
数年前、映画を見返して聴いて……私が間違ってた。いい曲だ。土下座。

井上さんのロック屋としてのカッコ良さを見たいならば、
動画で沢田研二の『許されない愛』テレビ放映版を探すどがオススメ。
岸部一徳と一緒に長髪振り乱し、スローな8ビートを刻む雄姿が美しい。

技術的な話をすると、井上さんのギターの音色というのは、
板切れに弦張っただけのチャチな楽器としてのエレキの良さを十全に伝える。
凄く余韻を感じるのに、実はリバーブもかけず、ストレートに弾いている。

『危険な二人』のイントロはレコーディングでは違う人だったようだが、
あのフレーズ、未だに真似できません。二音目のチョークダウンの加減が。
目の前で見たこともある。ポジションも指使いも同じ、でも出せないんです。

スタジオ系の名手は井上さん以降にも大勢いますけど、
立脚点がロックンロールなんですよね、だから音色もアプローチも違う。
自分の音楽を捨てた結果、辿り着いてしまった境地というのかな。

私、ギターは銃にも戦車にもミサイルにも勝てると思ってる世代です。
それを教えてくれた偉人の一人が井上尭之というギタリストなんです。
今そういうギタリストはつくづくいなくなった。少々哀しいことである。





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