Nicotto Town



good person is a liar7答

【挨拶】____________________


 ちょっと説明出来ない箇所がありますけど、
気にしないで下さい。

 よろしくお願いします。


【本編】____________________


 想像したことは無かったが、
これが死ぬという事なのだろうか?


 分厚い羽毛に身体を預けている様な、
気持ち悪くなるほどの浮遊感、
意識と言うか、認識する事ははっきりしている、
自分の名前ももう思い出せないが、
自分に起こっている事の感覚の認識は、やけにはっきりしている、
これから何が自分に起こるのか少しわくわくしながら、
傍観者的心境で、状況の推移を見守っていた。


 どうせ死ぬならじたばたしてもしかたない、
これから自分に何が起ころうがなんでもいい。


 世界中のどんな文学作品や、
心理学の専門書を読んでも、
ここから先の事を説明している情報は無い、
誰しもが通るこの先は全て未知だ、
事前の準備をしている事は不可能なのだ、
いっそ諦めもつく。


 生前と言って差し支えないか自分では分からないが、
生前の記憶では死ぬ事を、覚める事の無い永続的な眠りの様な、
裸の無抵抗で無音のままに、
虚無の彼方へ誘われるものだと考えていたが、
認識ははっきりしている、操縦できる夢を見ているような、
開放的で自由な世界、まるで地図にも載らない、
前人未到の土地への航海のような、
時間の概念を無くした、穏やかで緩慢な世界だった。


 死を祝福するような、
穏やかで緩慢な世界の何もかもが僕を楽しませる。


 手と言わず意識のような物を、
目と言わず見えているような巨大な球体に伸ばし、
触れているとは言えない感触に夢中で実感を追い求めた。


 時間の感覚が無いからか、
永遠にでもこの作業を続けていられる様な気がしてきたとき、
何の前触れもなくその球体は消えてしまった。


 心の雪が振るような寂しい感覚が、
沸沸と沸き上がると、忘れていたはずの痛みがぶり返してきた。


 胸の痛みと腕の痛み。


 前世の怪我の痛みが今頃になって痛む。


 苦しみに逃れようと身体をよじるが、
空に押しつぶされている様に、身体は固定さて、
呼吸もできないほどの圧力が身体全体に掛かっている。


 死ぬのも大変なんんだなと、
その痛みも受け入れようとしたとき、
僕の目が覚めた。


 現実の世界で目を覚ました。


 …


 現実の地元の病室のベッドの上で目を覚ました。


 自由が聞くのはまぶただけで、
指先も動かすことは出来ない、
顔の上にプラスティックのマスクの様な物が固定されて、
それが空気を供給しているようだ。


 うすぼんやりとしていた意識が次第に戻ると、
痛みが更に鋭敏に、所々に痒みを認識した。


 死んだと思ったのは勘違いで、
僕は生きていたようだ。


 急に自分の解釈が恥ずかしく思えて、
一人赤面して、舌を噛もうとした。


 口の中にも何か突っ込まれているようで、
自由に口を動かすことも出来ない。


 そこまで権威のある病院では無いと思っていたが、
こんな近未来的な設備を持っていた事にまず驚いた。


 複雑な配線が縦横無尽に張り巡らされているため、
何もできないまま、時間が過ぎるのを待っていたが、
定期的な診察の様なものだろうか、
看護師が来て、僕の意識が戻った事に気が付いて、
ぞろぞろと人が集まる。


 その中には、
あの空き家だと思っていた家に、
訪ねてきた誰かもいた。


 ずいぶんと執念深いものなんだなと、
僕は少しだけ罪悪感を催した。


 訪ねて来た誰かは、
一番手前にいた医者と思わしき人物と2・3言交わすと、
医者は僕に取り付けられている機器を一つ一つ外していく。


 やっと口の中の装置が取り外されると、
「意識ははっきりしてる? 身体は痛い?」と優しく問い掛けてきた。


 「うん 大丈夫」


 表情が暗い、
この医者だけじゃなく看護師も、
訪ねてきた誰かも、壁に掛かっている時計さえ表情が暗い。


 何が起こっているのだろう、
まだ僕はいわゆるいつもの日常には、戻れてはいないのだろうか、
いつもの日常…


 そういえばママがいない、
一番僕の日常に不可欠なママがこの場にいない、
僕がこんなに大きな事故にあった事で、
一番に来てくれても良いのに、
いない。


 なぜいないんだろう。


 「…ママは?」


 手近にいた医者に聞く、
暗い表情が更に暗く、口を引き結んで、
返答は無い。


 「…ねぇママは何でここにいないの?」


【後書き】___________________


 ありがとうございました。




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