Nicotto Town


ユメノツヅキ


備忘録②


 「神様がひとつだけ願い事を叶えてくれると言ったら?」

 「神様除去」
29歳でこの世を去った天才棋士村山聖は
そう答えた
映画『聖の青春』のワンシーンだ
 原作は大崎善生の同名小説だけれど
これだけはまだ読んでいなかった
負けず嫌いで不器用な青年を
松山ケンイチが演じ
このために20kg増量して
鬼気迫る演技を見せてくれる
 最近気づいたことなのだけれど
将棋は盤上の格闘技(聖は殺し合いだと言っていたけれど)だ
遅まきながら僕がそのことに気づいたのは
読売新聞に載せられた一枚の写真のおかげだ
その写真とは
藤井聡太4冠の対局中の写真だ
普段はちょっとぼっーとしたイメージ(ごめんなさい!)の彼が
髪を掻きむしるようにして
盤上を見つめている
その目はまさに鬼の目をしていた
 幼少期より「ネフローゼ」(腎臓の難病)を患い
命を削りながら将棋に打ち込んできた聖は
やがて膀胱癌を発症する
手術を勧められた聖は
麻酔をしなくてもいいなら手術をすると言う
麻酔で脳が鈍化することを恐れてのことだ
彼にとっては
将棋が指せなくなること
将棋で勝てなくなることが
何よりも辛いことだった
 病気(ネフローゼ)にならなければ
彼は将棋とは出会えなかった
でも今度は病気(膀胱癌)のせいで
将棋が指せなくなる
神様はどうしてこんなことをするんですかねと
聖は呟く
 生きたいと切実に願う人がいる一方で
切実に死を願う人もいる
でも生きたいと願っても
死にたいと願っても
死は必ず訪れる
人は生まれたその時から
死に向かって生きているのだ
 聖が活躍した時代は
羽生善治が飛ぶ鳥を落とす勢いで
前人未到の七冠を達成した時だ
村山聖と羽生善治は良きライバルだった
29歳の若さでこの世を去った村山聖に対して
羽生善治は無冠の棋士として
日々衰えていく我が身と闘いながら生きている
衰えゆく自分と対峙しながら
棋士として生きていくことは
聖には耐えられなかったかもしれない
   僕が今生きていること
もしかしたら明日には死んでしまうかもしれないこと
その意味について
その意図することについて
僕には知ることも理解することもできない
でもそれでいいのかもしれない
優柔不断な僕には
きっと自分の生き死になんて決められない






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